
現代社会でコミュニケーションの術を失い、周囲から異端視されている人間たちが、ネットの動画投稿サイトを通じてつながりを持つようになるが、その矢先に予想外の悲劇に襲われる。
ベストセラーとなった朝井リョウの同名原作小説の映画化作品で、現代における人間(というより日本人か)のアイデンティティーを描いた佳作。
主要登場人物は広島県福山市のショッピングモールの店員・桐生夏生(新垣結衣)と、彼女の高校時代の同級生・佐々木佳道(磯村勇斗)。
このふたりが徐々に理解を深め合い、距離を詰めていく過程に、横浜市に暮らす検事・寺井啓喜(稲垣吾郎)が不登校の息子・泰希(潤浩)、妻・由美(山田真歩)と繰り広げる葛藤、男性恐怖症の学生・神戸八重子(東野絢香)と同級生・諸橋大也(佐藤寛太)の張り詰めた関係が挿入される。
桐生と佐々木が強い絆で結ばれていく一方で、寺井はYouTubeに生きがいを見出した息子と妻を理解できず、トラウマを振り払って大也に近づこうとする八重子はなかなか大也に受け容れてもらえない。
そして、桐生と佐々木が福山市から横浜市に引っ越し、登場人物たち全員の人生が交錯した矢先、クライマックスでは予想だにしなかった事件が発生する。
テレビドキュメンタリー出身の岸善幸監督の演出は厳しいタッチの中にも優しい視線を感じさせ、観念的になりがちな内容をエンターテインメントとしてしっかり昇華しており、まことに秀逸。
現代は「多様性の社会」と言われるが、実際に社会から特別視(という以上に白眼視)される多様性を抱えた人間にとっては、大変生きにくい世の中になっている状況を本作は突きつけてくる。
オススメ度A。
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