『フロントライン』(WOWOW)🤗😱

129分 2025年 ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ

2020年2月、新型コロナウイルス感染拡大のきっかけとなった大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号における集団感染対策に取り組んだ災害派遣医療チーム、神奈川DMAT(ディーマット=Disaster Medical Assistance Team Japan)の活動を描いた作品。 
公開当時は船内での人種差別、英米の船会社の責任などが明確にされておらず、厚労省のプロパガンダ映画という批判もあったようだが、パンデミックの記憶がまだ生々しく残る今、感染者の救助に取り組んだ医療従事者の姿を克明に伝える映画が制作されたことを評価したい。

DMATはもともと、豪雨や震災のような自然災害のために組織されたチームで、コロナ禍のような感染症対策は活動の目的に含まれていなかった。
メンバーはふだん自分たちの勤務先で医療に従事しているごく普通の医者や看護士であり、映画を観ている限りは決して感染症の専門家と言える人間たちではない。

しかし、ダイヤモンド・プリンセス号の集団感染が発覚すると、神奈川県庁は緊急対策本部を設置し、DMATに船内で治療に当たるよう要請。
リーダーの結城英晴(小栗旬)が東日本大震災でともに医療活動に当たった仙道行義(窪塚洋介)を船に送り込むと、続々と増えていく感染者を入院させようにも救急車が足りず、県下の病院からも病床が足りないことを理由に受け入れを断られ続ける。

厚労省から派遣された立松信貴(松坂桃李)は当初、乗客の生命より国内での感染拡大を阻止する姿勢を打ち出して結城と激しく対立。
事実を元にした映画だから、両者の関係が劇的に変化する局面が訪れることはなく、事態が深刻化するにつれ、互いに歩み寄り、協力関係を築いていく過程が静かな緊張感の中に描かれる。

高齢者夫婦の夫が入院して船室に残された妻が自殺を図ったり、フランス人の乗客が「フランス語を話せないのか」と日本人の接客係に食ってかかったり、かいがいしく乗客の世話をしていたフィリピン人女性が感染すると、他の感染者と一緒に船倉の底に押し込められたり。
さらには、テレビニュースで顔を報じられた看護士の子供が学校でイジメにあったり、他の保護者から看護士の子供が通うのなら自分の子供は休ませると言い出したり、当時の報道ではわからなかった〝心のパンデミック〟というべき出来事の数々も大変興味深く観た。

ひとつだけ残念なのは、俳優の顔を見せなければならないためか、当時は誰もがつけていたマスクの存在が無いものとされていること。
エンドクレジットで、これは演出上の都合によるものであり、実際には医療従事者は全員マスクをつけていたと断り書きが出るが、ここは俳優にもマスクをつけさせるべきだった。

コロナ禍の時代は東京オリンピックもプロ野球も無観客となり、僕もマツダスタジアムで感染し、いろいろと苦しい思いもした。
そろそろ、コロナ禍とは何だったのか、スポーツ界でもしっかり振り返るべき時期かもしれない。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。2010〜2026年、東京スポーツでコラムや野球記事を連載。 日本文藝家協会会員。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
先頭に戻る