『最後の角川春樹』伊藤彰彦😁😳🤔🤓

毎日新聞出版 定価1900円=税別 第1刷:2021年11月25日

僕が中学、高校、大学の映画小僧だった頃、プロデューサー兼編集者として一世を風靡した角川春樹の一代記インタビュー。
『犬神家の一族』(1976)、『人間の証明』(1977)、『野生の証明』(1978)、『戦国自衛隊』(1979)、『復活の日』(1980)、『蒲田行進曲』(1982)、『時をかける少女』(1983)等々、劇場公開当時に追っかけて観た作品群の製作秘話を、角川がいまだ衰えぬ情熱をこめて語っている。

僕のように角川映画をオンタイムで鑑賞した世代には面白いこと請け合いで、一気に読めるだろう。
『影武者』(1982)の試写会で黒澤明に挨拶に行ったら無視された、ということをこのトシまで根に持ち、『影武者』そのものまで「私なら20分は短くできる」とこき下ろしているあたりは大人げないと思えなくもないが、そういう稚気も含めて規格外の個性の持ち主なのだろうと、改めて思った。

もっとも、そんなこと言うのなら、『戦国自衛隊』は30分カットできたんじゃないか、というのが僕の率直な感想。
著者は角川春樹の崇拝者であり、角川映画を評価し、個人的な感動を前提として質問を重ねているが、僕はそこまでシンパシーを覚えたことはなく、逆に退屈したりガッカリしたりした記憶もあるので、ところどころ違和感も覚えました。

角川文庫を売るために横溝正史、高木彬光、小松左京の過去作を復刻し、片岡義男や北方謙三を作家として鍛え上げ、ブレークさせた過程も実に面白い。
僕のようなしがないライターにも一生頭の上がらない恩人の編集さんがいて、やはり物書きの生き死には有能な編集さんとの巡り会いにかかっているのだなあ、と痛感した。

あえて、一つだけ食い足りない点を挙げるとすると、1993年に麻薬取締法違反で逮捕された事件の内情についてほとんど触れられていないこと。
角川は本当にコカインを常用していたのか、何のために麻薬を使い、どのような感覚を味わっていたのか、明らかにできる部分は明らかにしたほうが、角川春樹の半生を余すところなく振り返る、という本書の性格からしても、より完璧で潔い評伝になったと思う。

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。2010〜2026年、東京スポーツでコラムや野球記事を連載。 日本文藝家協会会員。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
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