
初版:2025年1月25日 7版:同年5月30日
この本は昨年の秋頃、母親との面会のために帰省している最中、竹原のTSUTAYAで買った。
当時、すでにベストセラーになっていたようだが、僕自身はそういう評判を知らず、読み始めた矢先に母親の病状が悪化(今年3月29日に他界)して、読了するのに少々時間がかかってしまった。
読み進めるのに手間取ったのは前半、ユダヤ人の起源と流浪が描かれた古代の章で、馴染みのない専門用語が頻出する上、あまりにも大昔なのでなかなか具体的なイメージが浮かばない。
しかし、19世紀の近世に入り、現代も続いていると言われるアシュケナジームとスフラディームの関係にまで進んでくると、それまで苦労して頭に入れた専門用語の意味とイメージが役立ち、やっと内容がスムーズに呑み込めるようになってくる。
「ユダヤ人」とは「人種」である以前にユダヤ教の「信者」である、ということまでは知っていたが、古代におけるそもそもの呼称が「イスラエル人」であるとは知らなかった。
イスラエル人は様々に枝分かれして世界諸国を移り住み、ロシア・ユダヤ人、アメリカ・ユダヤ人、ドイツ・ユダヤ人、オーストリア・ユダヤ人など、それぞれの国の政治や文化と折り合いを付けて生き続けてきた。
国家として初めてユダヤ人を「民族」と認定したのは1922年に発足したソ連だったというから、世界史的にはまだ割と最近である。
ユダヤ人にはまた、第2次世界大戦中のナチス・ドイツのホロコースト以前にも、東欧諸国で度重なるポグロム(虐殺)によって弾圧されながらもしぶとく、したたかに生き延びてきた歴史があった。
その一方で、ユダヤ人はイスラエル建国を巡ってアラブ人と激しく対立し、シオニストの地下組織イルグンによる虐殺事件をはじめ、現代に至るまで延々とアラブ人を迫害し続けている。
こういう一筋縄ではいかない「信者」の集団が、3000年の歴史を経ていかにして世界の趨勢に多大な影響を与える「民族」となったか、本書はわかりやすく教えてくれる。
終章は現代においてそんなユダヤ人像を代表する人物、イスラエルのネタニヤフ首相、ウクライナのゼレンスキー大統領、アメリカのエレナ・ケイガン最高裁判事についての考察で締め括られる。
今や全世界の人間が、ユダヤ人をホロコーストによる犠牲者としての側面だけから捉えてはならないと気づいているだろうが、本書はユダヤ人の実像を興味深く学べる格好の教科書と言えよう。
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