『ダイナスティ:マードック一族』(Netflix)🤗😱

Dynasty: The Murdoch
1シーズン4エピソード 全203分 2026年 アメリカ=Netflix

トランプ大統領、ジェフリー・エプスタインなど、アメリカ社会の〝病巣〟とも言える重要人物のドキュメンタリーを製作しているNetflixが、今度は現代のメディア王ルパート・マードックを取り上げた。
マードック本人をはじめ、家族や関係者にはほとんど取材を拒否されたそうだが、それでも貴重な内部文書やインタビュー映像を駆使し、見応えある作品に仕上げている。

マードックの名前が日本でも知られるようになったのは、彼が所有するFOXニュースで露骨なトランプ支持の姿勢を打ち出し、リベラル系メディアよりもいち早く政権内部の動きを報道するようになってから。
個人的にはトランプにすり寄る追従メディアの親分というイメージが強かったが、実際は自分のコングロマリットで利益をあげるためにトランプを利用しているしたたかなメディア商人だということが、本作を観るとよくわかる。

FOX以前にはニューヨーク・ポストを買収しており、主義主張そっちのけの大衆迎合主義を貫いて部数を拡大。
イギリスに進出すると、今度はニューズ・インターナショナルを売るために盗聴やハッキングによる情報収集を編集長に指示したことが露見して警察沙汰になった。

しかし、この世界中を騒がせたスキャンダルの最中にも、「自分は何も知らなかった。現場の記者が勝手にやったことだ」と恥も外聞もない言い訳をして憚らない。
マードックにとっては政治信条や社会正義など二の次で、「リベラルな主義主張は商売の邪魔にしかならない」という信念の下、ひたすら自分のメディア王国を拡大することに邁進。

そんなマードックの足下では、4人の子供たちが後継者になろうとしのぎを削り、文字通り骨肉の争いを繰り広げている。
若くしてメディアと世論を動かす力を与えられながら、ひとたび失敗するとマードックによって王国の片隅へ追いやられる姿が愚かしくも痛々しい。

日本にも元読売新聞主筆・渡邊恒雄のように「最後の独裁者」と自称するメディア王がいたが、まだしも商人としてよりは言論人としての矜恃があったように思う。
ナベツネさんやナベツネさんと仲の良かった元日刊現代会長・川辺孝文さんがもしまだ生きていたら、マードックを評して何と言うだろう。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。2010〜2026年、東京スポーツでコラムや野球記事を連載。 日本文藝家協会会員。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
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