『秒速5センチメートル』(WOWOW)😉

 63分 2007年 コミックス・ウェーブ

これも2017年のWOWOWの〈新海誠特集〉で放送された1本で、劇場用長編アニメ第2作。
主人公・遠野貴樹(声=以下同:水橋研二)が少年から大人へと成長していきながら、小学校の同級生だった篠原明里(第1話・近藤好美、第3話・尾上綾香)という少女を想い続ける姿が全3話のオムニバス形式で描かれる。

最新作『すずめの戸締まり』『君の名は。』を観てもわかるように、新海誠はとにかく、空、雨、星に加えて、電車が大好きらしい。
第1話「桜花抄」の貴樹が明里に会うために東京から栃木まで旅する過程では、車両の中から、新宿駅、途中停車する久喜駅、やっとの思いで辿り着く雪の中の岩舟駅まで、ひとつひとつ細かく描き込んでおり、とくにドアが開閉する場面のアングル、効果音、時間のかけ方など、丁寧という以上に執拗な感じさえする。

第2話「コスモナウト」、第3話「秒速5センチメートル」ではそれほど電車の場面はないものの、ラストで貴樹と明里が再会するのは電車の踏切のシーンでは、『君の名は。』の10年前に同じことをやっていたことがわかる。
こういう描写が僕のような大人の琴線、いまだに子供のままの部分を刺激し、ふだんは胸の底にしまってある郷愁を呼び起こされる野田。

子供のころに長距離を移動する手段はバスや電車しかなく、好きな女の子に会いに行くためにそういう交通機関に乗っているときは、誰にとっても特別な時間だったはずだから。
SF的要素はまったくなく、素直に楽しめ、甘酸っぱい思いを味わえる佳作。

オススメ度B。

旧サイト:2017年12月28日(木)付Pick-up記事を再録、修正

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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