『1917 命をかけた伝令』(WOWOW)🤗

1917
119分 2019年 イギリス=エンターテインメント・ワン、アメリカ=ユニバーサル・ピクチャーズ
日本公開:2020年 配給:東宝東和

第一次世界大戦真っ只中の1917年4月6日、すべての通信手段が断たれた中、最前線の連隊長に作戦中止の命令書を渡す任務を遂行する兵士の姿を描いた作品。
塹壕の本部からドイツ軍の猛攻にさらされる無人地帯(ノーマンズランド)を命懸けで駆け抜ける行程を、全編ワンカットワンシーンに見えるように撮影していることで話題になった。

実際にはカットをつないでいるとわかるところが3カ所ほどあるが、それでも、伝令を務める上等兵コンビ、ウィリアム・スコフィールド(ジョージ・マッケイ)、トム・ブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)が走り続ける距離と時間が生々しく伝わってくる。
例えば序盤、ドイツ軍が逃げ去った塹壕で爆発が起こり、生き埋めになったウィリアムをトムが必死になって掘り出す場面は、ワンカットワンシーンだから表現できる緊迫感に満ちている。

続いて、友軍に撃墜されたドイツ空軍の戦闘機がウィリアムとトムの眼前に不時着するシーンも素晴らしい。
最初は背景の青空の中の小さな点にしか見えなかった機体が見る見る大きくなって、ついにウィリアムとトムがいる牧場の小屋へ突っ込んでくるスピード感溢れる迫力は、ワンカットワンシーンでなければ表現できないだろう。

そうかと言って、決して手法優先、テクニックファーストの映画ではなく、重厚な人間ドラマとしての見せ場もたっぷり。
とりわけ、最初のうちは相棒に指名されて迷惑だ、とトムに文句を言っていたウィリアムが、やがてトムに熱い友情を示すようになる過程は胸に沁みる。

ネタバレになるので書かないが、最後にウィリアムが最前線でトムの兄ジョセフ(リチャード・マッデン)に巡り合う場面には涙が滲んだ。
ただ、このシーンが非常に感動的に感じられるのも、それまでにほとんどワンカットワンシーンで息詰まるような緊張感を積み重ねてきたがゆえであることも、改めて強調しておきたい。

オススメ度A。

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※再見、及び旧サイトからの再録

4『最後の決闘裁判』(2021年/英、米)B
3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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