BS世界のドキュメンタリー『RBG 最強の85才』(NHK-BS1)🤗

RBG
NHK放送版(2021年1月5日、6日=前後編各45分) オリジナル映画版:98分 
2018年 アメリカ 日本配給:ファインフィルムズ

『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年)でオスカー女優フェリシティ・ジョーンズが演じた合衆国最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ、通称RBGの評伝ドキュメンタリーで、『ビリーブ』と同じ年に公開された。
彼女の法律家としての半生や時代背景を描くだけでなく、法廷での弁論における単語の選び方や言い回しの巧みさなど、法律家としてのスキルの中身を細かく検証した上、ポップカルチャーのアイコンとなった側面にもスポットを当てている。

RBGが1993年の公聴会で最高裁判事に承認されており、このとき、上院法律委員会委員長を務めていたのが現在のバイデン大統領だった。
彼女がバイデン上院議員の問いかけに答え、真実のみを述べると近い、自分の出自を振り返るところから本作は始まる。

幼いころには目のクリッとした可愛い女の子だったRBGが、ハーバード大学ロースクールに入学したころには美しく聡明な女子大生の顔に変わってゆく映像が印象的だ。
やがて映画はRBGが米国における女性の地位向上に貢献した6つの性差別訴訟を紹介し、そこで彼女がどのような言葉を使ったかを、立体的なロゴを使い、僕のような英語に疎い日本人にもわかりやすく説明していく。

『ビリーブ』で描かれたシングルマザー(女性)なら受けられる社会保障がファーザー(男性)では受けられない、という問題を扱った裁判の内容も、ここで詳細に語られる。
それ以上に興味深かったのは、創立150年の歴史を誇り、男子しか入学できなかったヴァージニア州立軍事学校(VIM)に女子の士官候補生としての入学を最高裁で認めさせた1996年の判決。

それまでは当たり前のように女子の入学をはねつけていたVIMではこの判決以降、女子の数々が見る見る増えていき、女子卒業生たちがインタビューに答えてRBGへの感謝の言葉を述べている。
判決から20年後の2017年にはRBGがVIMに招かれ、大ホールで学校側から謝辞を述べられたのち、学生たちから万雷の拍手を浴びる場面は実に感動的だ。

自分の弁論が説得力を持っている理由について、RBGは幼いころから母親に教わった「決して怒りを表さないこと」「聞く相手を怒らせないこと」が大切だと語っている。
最高裁判事に就任してからは、法解釈の対立する保守派のスカリー判事とも親しく付き合うなど、ただ理想を追い求めるだけではなく、自分と意見の異なる相手の話にも耳を傾けられるリアリストでもあった。

一方で、トランプ大統領のことは毛嫌いしていたらしく、ペテン師呼ばわりして謝罪に追い込まれた。
もしRBGが2020年に87歳で亡くならず、1993年の公聴会で「真実のみを述べると誓いますか」と問いかけたバイデン上院議員が2021年に大統領になるまで生きていたら、そのときは何とコメントしていただろうか。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

136『天外者(てんがらもん)』(2020年/ギグリーボックス)B
135『ミセス・ノイズィ』(2020年/アークエンタテインメント)B
134『スパイの妻〈劇場版〉』(2020年/ビターズエンド)A
133『始皇帝暗殺』(1998年/中、仏、米、日)C
132『不毛地帯』(1976年/東宝)B
131『夜のピクニック』(2006年/ムービーアイ、松竹)C
130『空に住む』(2020年/アスミック・エース)C
129『浅田家!』(2020年/東宝)A
128『ザ・キング』(2017年/韓)A
127『光州5・18』(2007年/韓)C
126『シルミド SILMIDO』(2003年/韓)B
125『KCIA 南山の部長たち』(2020年/韓)B
124『3時10分、決断のとき』(2007年/米)B
123『アルビノ・アリゲーター』(1997年/米)C
122『悪い種子』(1956年/米)C
121『スターリンの葬送狂騒曲』(2017年/英、仏)C
120『ノマドランド』(2021年/米)A
119『復讐無頼 狼たちの荒野』(1968年/伊、西)B※
118『スペシャリスト』(1969年/伊、仏)C
117『父 パードレ・パドローネ』(1977年/伊)B※
116『ボルベール〈帰郷〉』(2006年/西)A
115『雨の訪問者』(1970年/伊、仏)A※
114『カサンドラ・クロス』(1976年/西独、伊、英)B※
113『イエスタデイ』(2019年/英、米)B
112『ペイン・アンド・グローリー』(2019年/西)A
111『バンクシーを盗んだ男』(2017年/英、伊)B
110『ザ・ヤクザ』(1974年/米)A
109『健さん』(2016年/レスぺ)B
108『ゴルゴ13』(1973年/東映)D
107『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015年/伊)B※
106『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』(2020年/米)A
105『真犯人』(2019年/韓)B
104『ダイヤルM』(1998年/米)B※
103『ダイヤルMを廻せ!』(1954年/米)A
102『私は告白する』(1953年/米)A
101『黄泉がえり』(2003年/東宝)B
100『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994年/米)B
99『ワンダーウーマン 1984』(2020年/米)B
98『博士と狂人』(2019年/英、愛、仏、氷)C
97『追悼のメロディ』(1976年/仏)A※
96『デ・パルマ』(2015年/米)B
95『ブルース・スプリングスティーン 闇に吠える街 30周年記念ライブ2009』(2009年/米)B
94『ブルース・スプリングスティーン ライブ・イン・バルセロナ』(2003年/米)A
93『ブルース・スプリングスティーン ライブ・イン・ニューオリンズ2006~ニューオリンズ・ジャズ・フェスティバル』(2006年/米)B
92『ウエスタン・スターズ』(2019年/米)B
91『水上のフライト』(2020年/KADOKAWA)C
90『太陽は動かない』(2021年/ワーナー・ブラザース)C
89『ファナティック ハリウッドの狂愛者』(2019年/米)C
88『ミッドウェイ』(2019年/米、中、香、加)B
87『意志の勝利』(1934年/独)A
86『美の祭典』(1938年/独)B
85『民族の祭典』(1938年/独)A
84『お名前はアドルフ?』(2018年/独)B
83『黒い司法 0%からの奇跡』(2019年/米)A
82『野球少女』(2019年/韓)B
81『タイ・カップ』(1994年/米)A※
80『ゲット・アウト』(2017年/米)B※
79『アス』(2019年/米)C
78『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(2018年/米)C
77『キング・オブ・ポルノ』(2000年/米)B※
76『怒りの葡萄』(1940年/米)A
75『パブリック 図書館の奇跡』(2018年/米)A
74『バクラウ 地図から消された村』(2019年/伯、仏)B
73『そして父になる』(2013年/ギャガ)A※
72『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
71『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
70『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
69『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
68『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
67『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
66『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
65『メメント』(2000年/米)B
64『プレステージ』(2006年/米)B
63『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B※
4『宇宙戦争』(1953年/米)B※
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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