『ライド・ライク・ア・ガール』(WOWOW)😉

Ride Like a Girl 
99分 2019年 オーストラリア 日本公開:2020年 イオンエンターテインメント

2015年、オーストラリア最高峰のレース、メルボルンカップで女性として初めて優勝した実在の騎手ミシェル・ペインの半生を描いた物語。
有名な調教師の家に10人きょうだいの末っ子として生まれ、兄や姉8人が騎手になった中、自らも当然のように騎手を目指した、という家庭環境に、こんな家族があるのかと驚かされる。

ミシェル(テリーサ・パーマー)は15歳で見習い騎手となるが、末娘だけに猫可愛がりしていた父親パディー(サム・ニール)は、彼女の希望を認めることができない。
ミシェル自身、レース場に女性専用の粗末な更衣室をあてがわれたり、調教師にセクハラを受けたり、辛い思いを重ねる。

そんなミシェルを常に励まし続けるのが、ダウン症ながらも優秀な調教師となるスティーヴィーで、これを本人が演じていることにまたびっくり。
姉のブリジッドが落馬して亡くなり、パディーがますますミシェルに対して頑なな態度を取るようになっていた中、今度はミシェルがレースに勝った直後、馬が転倒して彼女も重傷を負う。

ミシェルはどうにか意識を回復したものの、前頭葉を損傷したために自分の名前すら書くことができず、まともな会話を交わすこともままならない。
そこへパディーが救いの手を差し伸べ、メルボルンカップで優勝した馬と騎手の名前を尋ねると、子供のころから暗記していた名前がスラスラと口を突いて出てくる、というくだりはちょっと先を急ぎ過ぎているかな。

こういう省略がこの映画の弱点で、ミシェルがサラブレッドのプリンスオブペンザンスに乗る契約体重50㎏まで減量するため、1日で3㎏のダイエットに成功するくだりなど、いかにも御都合主義的に見える。
それでも、様々な苦難を乗り越え、いよいよメルボルンカップに出場するクライマックスは、結果がわかっていても身を乗り出して見入った。

レースシーンは非常にリアルで、競走馬が疾走する音が地鳴りのように聞こえ、隙間に入り込むミシェルに男性騎手が浴びせる罵声も実に生々しく、このくだりの迫力は競馬映画の傑作『シービスケット』(2003年)を越えている。
僕は武豊にインタビューしたことがあり、彼も飛ぶ取り落とす勢いだったころはあんなふうに先輩からプレッシャーをかけられていたのだろうかと、余計なことが気になりました。

監督のレイチェル・グリフィスは女優で、これが初の長編監督作品。
実在の女性の伝記映画だからか、甘くなっているところも力みが目立つところもあるが、次回作を期待したくなる出来栄えである。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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