『シービスケット』(スターチャンネル1)🤗

Seabiscuit
141分 2003年 アメリカ=ユニヴァーサル・ピクチャーズ
日本公開:2004年 ドリームワークス、タッチストーン・ピクチャーズほか

1930年代の大恐慌時代、アメリカで活躍した競走馬シービスケットと、このサラブレッドをめぐる男たちの人間ドラマ。
原作はローラ・ヒレンブランドが2001年に発表した小説で、スポーツ文学として高い評価を得ており、日本でも翻訳が出版されている。

人間側の主人公はトビー・マグワイア(制作総指揮も兼務)演じる騎手レッド・ポラード。
そのポラードと調教師トム・スミス(クリス・クーパー)、彼らの雇用主でもあるシービスケットの馬主チャールズ・スチュワート・ハワード(ジェフ・ブリッジス)とその妻マーセラ(エリザベス・バンクス)といった面々が物語の中心人物たちである。

ハワードはもともと自転車屋で、サンフランシスコで店を開いたもののうまくいかず、店先で中古車の修理をしているうち、こちらのほうがうまみがあると気づいてカーディーラーに転身。
このビジネスが大当たりして一躍大金持ちになるものの、自動車事故で幼いひとり息子を亡くし、打ち拉がれていたころ知り合ったマーセラに励まされ、シービスケットと巡り会う。

一方、騎手のレッドはもともと大金持ちのお坊ちゃんで、子供のころからローレンスやメルヴィルを読んでいる勤勉な読書家でもあった。
ところが、折からの大恐慌に遭って一家が破産、里子に出されて騎手を目指さざるを得なくなる。

監督と脚本を兼務しているゲイリー・ロスは、このようにまず主要登場人物の素性と性格の説明に十分な尺を割き、細部に至るまできっちりと描写。
ハワードがどのようにしてシービスケットを見出したのか、いかにして変わり者の騎手レッド、偏屈男の調教師トムを雇うことになったのかをじっくり丁寧に描いている。

とくにトム役のクリス・クーパーがハマり役で、レッド役のトビー・マグワイアをしのぐ好演。
彼らにからむ競馬場の厩務員(?)に扮し、往年の名脇役エド・ローターがいい味を出していることも覚えておきたい。

最初のヤマ場はアメリカ競馬界で伝説と化している三冠馬ウォーアドミラルとのマッチレース。
いよいよというときに専属騎手のレッドが別の馬への騎乗を頼まれ、思わぬ事故で落馬してしまい、騎乗が適わぬどころか騎手生命さえ危ぶまれるほどの重傷を負った。

さて、どうなるか、というこの先は書かないが、いささか御都合主義のように見えながら、得心のゆく結果とさらなる大団円が待ち受けている。
レースの場面はスクリーンで見たらかなりの迫力とリアリティを感じただろうなあ、と劇場で見逃したことをちょっぴり後悔しました。

お勧め度はA。

旧サイト:2015年10月11日(日)Pick-up記事を再録、修正

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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