『天気の子』(WOWOW)🤗

114分 2019年 東宝

記録的大ヒットとなった『君の名は。』(2016年)以来、4年ぶりとなった新海誠の新作長編アニメ。
降水確率100%、どんなに土砂降りの雨が降っていても、雲を追い払い、陽光を呼び込む〝晴れ女〟と家出少年のラブストーリーである。

オープニング早々、離島から家出してきた主人公・森嶋帆高(声=以下同・醍醐虎汰朗)が彷徨い歩く新宿の繁華街が微に入り細を穿つように描かれる。
現実の新宿高層ビルや歌舞伎町の街並みをリアルに再現しながら、アニメーションとしての幻想性に満ちており、観る者を引きずり込まないではおかない。

生活費を稼ごうにも学生証がないので雇ってもらえず、マクドナルドで途方に暮れていた帆高は、アルバイト店員の天野陽菜(森七菜)にこっそりハンバーガーをおごってもらう。
このハンバーガーがビッグマックで、腹を満たした帆高が乗る都営バスは白61の練馬車庫行き、高架線を走る山手線の電車を遠景で描きながら、新宿駅が近づくにつれてスピードを緩めていくあたりなど、現実感と生活感に満ちた描写が実に細かい。

『君の名は。』でもそうだったように、こうしたきめ細かいシーンの積み重ねが、陽菜が晴れ女ぶりを発揮する前半の盛り上がりの布石となり、東京じゅうが大雨に見舞われる後半のクライマックスにも圧倒的なリアリティーと迫力をもたらしている。
個人的に大変驚いたのは、重要な場所として登場する代々木会館の屋上。

ここはかつて、テレビドラマ『傷だらけの天使』(1974〜75年/日本テレビ)で小暮修(萩原健一)と乾亨(水谷豊)が暮らしていたペントハウスのロケ地になったところ。
僕は萩原さんの自叙伝『ショーケン』(2008年/講談社)の構成の仕事をしていた最中、すでに廃屋と化していたこのビルの中に入ったことがあり、内部で朽ちかけた飲み屋の看板まで描かれていることに、何とも形容し難い感慨を覚えた。

そうしたリアルな描写の半面、新海誠作品ならではのファンタジックなシーンの数々がまた素晴らしい。
とくに、晴れ女の能力を使い過ぎた陽菜の身体が徐々に透明化していき、〝昇天〟した雲の上で水滴の魚に囲まれているシーンは、形容し難いほどの美しさ、みずみずしさを感じさせ、なおかつ生命力にも溢れた名場面である。

しかし、これは僕の勝手な推察なのだが、本作で新海誠が最もこだわったのは、実は「晴れ」ではなく「雨」の描き方ではないか。
新海は『君の名は。』の前に『言の葉の庭』という純文学的短編アニメを制作しており、これは新宿御苑で逢瀬を重ねる少年と年上の女性の物語である。

この作品でも雨が重要なモチーフ兼小道具となっており、降りしきる雨滴が御苑の池に跳ね、波紋を広げる描写が、文字通り観る者の胸に染み入るように描かれていた。
新海はそのころから、自分の雨の世界をスケールアップした長編娯楽アニメを作ろうという構想を温めていたに違いない。

もうひとつ、RADWIMPSの音楽とのコラボレーションが見事だったことも付記しておきたい。
世代を超えた様々な要素を作品中で融合させた新海誠の世界、新作が観られるのか何年後になるのだろうか。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

136『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019年/アスミック・エース)C
135『サニー/32』(2018年/日活)C
134『凶悪』(2013年/日活)B
133『ほえる犬は噛まない』(2000年/韓)C
132『暗黒の恐怖』(1950年/米)C※
131『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015年/米)A※
130『フューリー』(2014年/米)C※
129『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』(2012年/露)B※
128『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(2019年/露)C
127『ゾンビ・ガール』(2015年/米)B※
126『狼男アメリカン』(1981年/米)B※
125『ウルフ』(1994年/米)B
124『パルプ・フィクション』(1994年/米)A
123『トゥルー・クライム』(1999年/米)C
122『ブラッド・ワーク』(2002年/米)B
121『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン4』(2016年/米)B
120『ザ・コミー・ルール 元FBI長官の告白』(2020年/米)B
119『ジェミニマン』(2019年/米)B
118『ガール・イン・ザ・ミラー』(2019年/加)B
117『ドッペルゲンガー』(2003年/アミューズピクチャーズ)B
116『屍人荘の殺人』(2019年/東宝)B
115『ドクター・スリープ』(2019年/米)B
114『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実』(2013年/米)A※
113『疑惑のチャンピオン』(2015年/英、仏)B※
112『陽だまりのグラウンド』(2001年/米)B
111『ホテル・ムンバイ』(2019年/豪、印、米)A
110『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年/松竹)B
109『閉鎖病棟−それぞれの朝−』(2019年/東映)C
108『真実』(2019年/仏、日)A
107『氷の微笑』(1992年/米)B
106『チャーリーズ・エンジェル』(2019年/米)C
105『FBI:特別捜査班 シーズン1 #22対決の時』(2019年/米)C
104『FBI:特別捜査班 シーズン1 #21隠された顔』(2019年/米)B
103『FBI:特別捜査班 シーズン1 #20エジプトの要人』(2019年/米)B
102『轢き逃げ 最高の最悪な日々』(2019年/東宝)B
101『蜜蜂と遠雷』(2019年/東宝)B
100『ワン・カップ・オブ・コーヒー 栄光のマウンド』(1991年/米)A
99『ドリーム・ゲーム 夢を追う男』(1991年/米)B※
98『スラッガーズ・ワイフ』(1985年/米)B
97『死霊のはらわた』(2013年/米)C※
96『死霊のはらわた』(1981年/米)A※
95『脱出』(1972年/米)A※
94『ラスト・ムービースター』(2018年/米)B
93『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン3』(2015年/米)A
92『FBI:特別捜査官 シーズン1 #19白い悪魔』(2019年/米)B
91『FBI:特別捜査官 シーズン1 #18ラクロイ捜査官』(2019年/米)C
90『FBI:特別捜査班 シーズン1 #17秘密のデート』(2019年/米)C
89『世界の涯ての鼓動』(2017年/独、仏、西、米)C
88『殺人鬼を飼う女』(2019年/KADOKAWA)D
87『軍旗はためく下に』(1972年/東宝)A※
86『イングリッシュ・ペイシェント』(1996年/米)B
85『ラスト、コーション』(2007年/台、香、米)A
84『サンセット大通り』(1950年/米)A※
83『深夜の告白』(1944年/米)A
82『救命艇』(1944年/米)B※
81『第3逃亡者』(1937年/英)B※
80『サボタージュ』(1936年/英)B※
79『三十九夜』(1935年/英)A※
78『ファミリー・プロット』(1976年/米)A※
77『引き裂かれたカーテン』(1966年/米)C
76『大いなる勇者』(1972年/米)A※
75『さらば愛しきアウトロー』(2018年/米)A
74『インターステラー』(2014年/米)A
73『アド・アストラ』(2019年/米)B
72『FBI:特別捜査班 シーズン1 #16ラザロの誤算』(2019年/米)C
71『FBI:特別捜査班 シーズン1 #15ウォール街と爆弾』(2019年/米)C
70『FBI:特別捜査班 シーズン1 #14謎のランナー』(2019年/米)D
69『FBI:特別捜査班 シーズン1 #13失われた家族』(2019年/米)D
68『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン2』(2014年/米)A
67『記憶にございません!』(2019年/東宝)B
66『新聞記者』(2019年/スターサンズ、イオンエンターテイメント)B
65『復活の日』(1980年/東宝)B
64『100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!』(2004年/米)B
63『ロケットマン』(2019年/米)B
62『ゴールデン・リバー』(2018年/米、仏、羅、西)B
61『FBI:特別捜査班 シーズン1 #12憎しみの炎』(2019年/米)B
60『FBI:特別捜査班 シーズン1 #11親愛なる友へ』(2019年/米)B
59『FBI:特別捜査班 シーズン1 #10武器商人の信条』(2018年/米)A
58『FBI:特別捜査班 シーズン1 #9死の極秘リスト』(2018年/米)B
57『病院坂の首縊りの家』(1979年/東宝)C
56『女王蜂』(1978年/東宝)C
55『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
54『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
53『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
52『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
51『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
50『FBI:特別捜査班 シーズン1 #6消えた子供』(2018年/米)B
49『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
48『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
47『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
46『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
45『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
44『ザ・ボート』(2018年/馬)B
43『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
42『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
41『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
40『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
39『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
38『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
37『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
36『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
35『下妻物語』(2004年/東宝)A
34『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
33『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
32『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
31『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
30『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
29『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
28『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
27『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
26『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
25『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
24『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
23『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
22『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
21『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
20『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
19『大脱出2』(2018年/中、米)D
18『大脱出』(2013年/米)B
17『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
16『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
15『グリーンブック』(2018年/米)A
14『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
13『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
12『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
11『前科者』(1939年/米)C
10『化石の森』(1936年/米)B
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A 

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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