『大脱獄』(NHK-BS)

There Was a Crooked Man…
125分 1970年 アメリカ=ワーナー・ブラザース 日本公開:1971年

これも前項『七人の特命隊』(1968年)と同様、中学生時代に地上波テレビの洋画劇場で両親と一緒に鑑賞し、その後すっかり忘れていた作品。
当時放送されたのは確か『土曜映画劇場』(NET=現テレビ朝日)で、1時間半枠の番組だったから、実質的に半分くらいカットされていたはずだ。

だからかどうか、今回のノーカット字幕版はまったく違う作品に見えた。
記憶と重なっていたのは、主演のカーク・ダグラスがアリゾナの刑務所でケンカした相手の頭を便所に突っ込む場面、それに幕切れ寸前でダグラスがガラガラ蛇に噛まれるオチぐらい。

ダグラス演じる悪党パリス・ピットマン・Jrは資産家の家に押し入り、現金50万ドルをガラガラ蛇の巣に隠した直後、売春宿で保安官に逮捕されてしまう。
砂漠の真ん中に建てられた刑務所に収容されると、同房の囚人ミズーリ・キッド(バージェス・メレディス)、ならず者フロイド(ウォーレン・オーツ)、詐欺師ダドリー(ヒューム・クローニン)らを引き入れて脱獄を計画している最中、大暴動が発生。

暴動が鎮圧されたのち、フロイドに撃たれた保安官ロープマン(ヘンリー・フォンダ)が新たな刑務所長に就任。
パリスは50万ドルの分け前をエサにロープマンを籠絡しようと目論むが、ロープマンは逆に刑務所生活の改善に協力するようパリスに持ちかける。

いざ脱獄に取りかかると、パリスが次々に仲間を裏切り、ひとりだけ逃げ出すくだりは『七人の特命隊』のマッケイ(チャック・コナーズ)そっくり。
ただし、マカロニウエスタンではなくアメリカ製コメディのこちらは、悪漢が大金を独り占め、とはいかない。

パリスがガラガラ蛇に噛まれてあっさり死んでしまい、50万ドルは追いかけてきたロープマンがいただいて遁走。
これがマザーグースの一節から取った原題「ひねくれた男」を意味している。

脚本は『俺たちに明日はない』(1967年)で売り出したばかりのデヴィッド・ニューマン、ロバート・ベントンの名コンビ。
当時の日本公開版のチラシも、巨匠ジョセフ・L・マンキウィッツではなく、このライターたちのほうが大きくキャッチコピーに謳われている。

ただし、マンキウィッツの演出はメリハリがなく、終始間延びした雰囲気で、最後までちっともワクワクさせない。
ダグラス、フォンダ、メレディス、クローニン、オーツら、ベテランをそろえた俳優陣はそれなりにいい仕事をしているが。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2912年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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