『タイソン』(Netflix)🤗😱

Tyson
4エピソード 全263分 2026年 アメリカ=Netflix

ボクシング史上、世界最強とも〝最凶〟とも言われたマイク・タイソンの出生から今日までを詳細に描いたドキュメンタリー。
タイソン自身は2013年に『真相 マイク・タイソン自伝』(日本語訳は2014年出版)で波乱に満ちた人生を赤裸々に明かしているが、そうと知っていてもこうして映像で観ると、あまりにもスキャンダラスで凄絶な内容に改めて驚かされる。

僕は日刊現代の社員記者だった1980~90年代、タイソンの世界タイトルマッチは追いかけるようにして観ていた。
もちろん現地ではなくテレビ中継だが、当時は画面からでもタイソンの強さと迫力が伝わってきて、ついにモハメド・アリの座を継ぐカリスマが現れたかとゾクゾクしたものだ。

1990年、ジェームズ・ダグラス戦のために来日した際には、当時麹町にあった日本テレビで行われた記者会見から取材。
日テレの女子アナが質問に立つと、タイソンは急にデレデレした笑顔を浮かべて手まで振っていたのに、アメリカ人記者が質問し始めたら途端に不機嫌な表情になり、素っ気ないコメントを返していた。

今思えば、その頃から情緒不安定で、米マスコミと極めて険悪な関係になっていたのだろう。
自分の強さを過信してろくに練習もしていなかったらしく、同年2月11日、東京ドームで行われたダグラス戦ではまさかのKO負けを喫している。

そこからのタイソンの人生はアップダウンの激しいジェットコースターさながら。
1990年代にはレイプ事件やストリートファイト事件を起こして逮捕されたり、再起への道を歩み始めたかと思いきやイベンダー・ホリフィールドとのタイトルマッチで耳に噛みついて失格負けしたり。

この頃には日刊現代の上司も「タイソンはもうキワモノだ」と紙面で扱うことに興味をなくし、僕自身も以前のようにWOWOWの試合中継を追いかけて観る気をなくしてしまった。
2003年には顔に気味の悪いタトゥーを入れており、もう本当に頭がおかしくなってしまったんじゃないかと思ったら、このドキュメンタリー映画でタイソン本人が「あの頃の俺は頭がイカれていた」と明かしている。

本作では、このタトゥーについての質問をはじめ、タイソンが波乱に満ちた半生と数々の奇行やスキャンダルについて率直に語っている。
現役後半から始まったアルコール中毒、コカイン中毒、乱脈を極めた女性関係はレノックス・ルイスに敗れて引退してからも治まらず、たびたび警察沙汰にもなった。

1985年に18歳でボクシングの師カス・ダマトと死別し、1988年頃に契約したドン・キングに搾取されるようになってから、タイソンは素面でいるより酔うかイカれている時間の方が長かったのではないか。
現在60歳になり、ヒキガエルの分泌物によって薬物とアルコールの依存症から脱したと、エンディングで明かしているが、果たして本当なのかどうか。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。2010〜2026年、東京スポーツでコラムや野球記事を連載。 日本文藝家協会会員。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
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