
SNSが社会に定着して以来、「承認欲求」は単なる流行を超え、人類の誰もが罹ってしまう感染症か花粉症のようになりつつある。
主人公の大物俳優が自分の評判を気にしては「俺のこと、なんか言ってた?」と他人に聞き、ヤマ場で「俺は性欲と承認欲求だけでここまでやってきたんだ!」と叫ぶ姿は、間違いなくSNS時代の現代人を象徴している。
役所広司演じる大物俳優は日本人でありながらシャークスピアのリア王に抜擢され、舞台劇の本場ロンドンのグローブ座で熱演を披露。
一躍世界的名優の仲間入りを果たしたつもりで日本に帰国したら、なんと一般市民はもちろん、2番目の妻(江口のりこ)も前妻で所属事務所の社長(吉田羊)も自分のことを知らない。
パニクった役所が何とかして自分を思い出してもらおうと、躍起になって虚しい努力を繰り返すくだりが大いに笑える。
やがて、役所がロンドンに滞在している間、新型コロナより強力な感染症が流行り、その予防ワクチンの副作用で99%の国民が部分的記憶喪失障害に罹ったことがわかってくる。
持ち合わせの現金が尽き、カードも期限切れで、帰る家もなくした役所は、無銭飲食したサウナの店長(坂井真紀)に雇われ、住み込みで働くようになる。
ところが、そのサウナで行われたテレビドラマの撮影をきっかけに芸能界復帰のきっかけを掴み、新たな役者人生を歩み始めるのだが。
ジェットコースタームービーさながらの展開を見せる宮藤官九郎の脚本は、数あるクドカンドラマの中でも出色の出来栄え。
今度こそ再起に成功するぞ、と思わせておいては、役所が過剰な承認欲求によって墓穴を掘ってしまう展開に腹を抱えて笑ってしまった。
俳優陣も主役の役所をはじめ、江口、吉田とそれぞれ好演を見せている中、僕はしがないチーフADに扮した松山ケンイチが印象に残った。
『デトロイト・メタル・シティ』(2008)や『カムイ外伝』(2009)などを観て、エキセントリックな演技派だとばかり思っていたのだが、こういう庶民的で共感を呼ぶ役をやっても実にうまい。
オススメ度A。
A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑