『鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折』春日太一😁😭😳🤔🤓

文藝春秋 定価2500円=税別
第1刷:2023年11月30日 第4刷:2025年4月5日

橋本忍は「戦後」ではなくいっそ「日本映画史」において最大の脚本家と言ってもいいと思う。
しかも、単に才能や筆力があるだけではなく、自分の作品を作品化するプロデューサーとしても、それをヒットさせる興行師としても群を抜いた存在だった。

本書には、橋本が頭角を現した初期の黒澤明作品、充実期の時代劇やミステリー、最盛期に自ら興したプロダクションの超大作『砂の器』(1974)、『八甲田山』(1977)など、僕が映画小僧だった頃に洗礼を受けた名作の舞台裏が、橋本自身の言葉と著者の綿密な検証によって仔細に綴られている。
そうした描写を目で追っているだけでもげっぷが出るほどだ。

個人的に得心がいったのは、松本清張原作のミステリー小説を脚本化する場合、橋本が意図的に謎解きの面白さを切り捨て、あえて矛盾のある描写を盛り込んでいた、というくだり。
橋本はそういう手法によって終盤を盛り上げ、制作過程でプロデューサーにシナリオの〝欠陥〟を指摘されても受け容れなかったという。

僕は『ゼロの焦点』(1961)でも『砂の器』でも橋本の意図が理解できず、Blogのレビューにはいつもシナリオ上の〝弱点〟と指摘していたのだが、本書によって真相を知った今となっては汗顔の至り。
また、シナリオを書く際には作家としての志向や好みより、常にプロデューサーとして映画化して当たるか、当たらないかを事前に詳しく検討し、当てることを最優先に考えていたことにも驚かされた。

筆者は単に橋本の功績を称えるだけでなく、実は「競輪キチガイ」だったギャンブラー的キャラクターにも言及。
橋本自身は生前に明かしてはいなかったが、エキストラや観客動員に繋がりの深かった創価学会の協力を仰いでいたことも指摘している。

ただ、あえて個人的な不満をあげるとすれば、リアルタイムで観た『日本沈没』(1973)、「祟りじゃ~っ!」が強烈だった『八つ墓村』(1977)の裏話をもっと読みたかったところです。
日本映画史上に残る怪作にして大失敗作となった『幻の湖』(1982)について延々と語られるよりは。

😁😭😳🤔🤓

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。2010〜2026年、東京スポーツでコラムや野球記事を連載。 日本文藝家協会会員。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
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