『パラレル・マザーズ』(WOWOW)🤗😱

Madres paralelas
123分 2021年 スペイン、フランス R15+
日本公開:2022年 配給:キノフィルムズ

『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年)に始まって、『ボルベール〈帰郷〉』(2006年)、『抱擁のかけら』(2009年)、『ペイン・アンド・グローリー』(2019年)と名監督ペドロ・アルモドバルが名女優ペネロペ・クルスと組んだ映画には非常に秀逸な作品が多い。
本作では赤ん坊の取り違えというコメディにありがちなストーリイを展開しながら、シングルマザーたちの祖先が虐殺されたスペイン内戦の血塗られた歴史に迫っていく。

クルス演じる主人公、写真家のジャニスは曾祖父母や故郷の村人たちがかつて内戦の犠牲になり、身元不明の遺体として埋められた原っぱを発掘したい、と法人類学者アルトゥロ(イスラエル・エルハルデ)に依頼する。
ふたりは調査の過程で恋仲になり、やがてジャニスはアルトゥロの子供を妊娠。

年齢的にも出産するならこれが最後のチャンスと考えたジャニスは、病身の妻がいるアルトゥロと別れてシングルマザーとなることを決意。
産院で同室となった17歳の妊婦アナ(ミレナ・スミット)と同じ日に同じ女の子を生み、退院してからも友人としての付き合いを続けようと約束する。

ところが、セシリアと名付けられた赤ん坊を見にやってきたアルトゥロは、セシリアは自分に似ていない、本当に自分の子供なのか、DNA鑑定をするべきだとジャニスに告げる。
怒ったジャニスはアルトゥロの勧めを拒絶し、セシリアを育て続けるが、一抹の不安を拭えず、娘と自分の唾液を採取してDNA鑑定に踏み切った。

ここから先は詳述を避けるが、ジャニスとアナが様々な葛藤を通じて理解を深め合い、子供を育てることの喜びと苦しみを学んでいく過程がクライマックスまで大変感動的、かつ叙情的に描かれる。
とりわけ、ふたりが村人たちとともに、冒頭で語られた曽祖父母が埋められた集団墓地を訪れる場面が印象的だ。

また、ジャニスがアナをベビーシッター兼メイドとして雇い、料理を教える場面で、ジャニスが WE SHOULD ALL BE FEMINISTS とプリントされたTシャツを着ている演出も、おやっと思わせた。
これ、世界的なオピニオン・リーダーとして知られるナイジェリア・イボ民族の作家チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの著書(2014年、邦訳『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』河出書房新社)のタイトルなのだ。

時の経過によって鮮やかに変化するスミットのヘアスタイルと衣装も鮮やかで、衣装を担当したパオラ・トレスのセンスが素晴らしい。
ホセ・ルイス・アルカイネのキャメラ、アンチョン・ゴメスのセットが作り出した映像も比類なき美しさである。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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