『ボルベール〈帰郷〉』(WOWOW)🤗

Volver
120分 2006年 スペイン 日本公開:2007年 配給:ギャガ

スペインの巨匠ペドロ・アルモドバルの代表作の1本で、カルロス・ガルデルによるタンゴの同名曲『ボルベール』を下敷きにしているという家族劇。
同国の映画賞の最高峰ゴヤ賞の作品賞、監督賞、主演女優賞(ペネロペ・クルス)など主要5部門を受賞したほか、カンヌ映画祭では脚本賞、及び主要登場人物を演じた6人の女優全員に優秀女優賞が贈られている。

開巻、主人公ライムンダ(クルス)が娘パウラ(ヨアナ・コボ)、姉ソーレ(ロラ・ドゥエニャス)と一緒に故郷ラ・マンチャの墓地で実家の墓を掃除している。
墓の下にはライムンダとソーレの両親が埋葬されていて、3年半前にふたりとも火事で焼け死んでしまったらしい。

ライムンダ、パウラ、ソーレはマドリードへ帰る前、母方の伯母パウラ(チュス・ランプレアベ)の家に寄るが、老齢のために目と足が不自由で認知症も進んでおり、ライムンダは認識できても、ソーレのことはすっかり忘れている。
そのソーレがトイレを借りようと2階に上がると、そこには伯母が使えないはずの新品のエアロバイクが置かれており、この家には他に誰か住んでいるのか、ソーレは疑いを抱く。

ライムンダは自分が実家や両親と疎遠になっていた間、親の面倒を見てくれた伯母に恩義を感じており、マドリードに引き取って世話をしたいと考えていた。
しかし、伯母の向かいの家に住み、ライムンダたちとも旧知の仲のアグスティーナ(ブランカ・ポルティーヨ)は、私が面倒を見るから大丈夫だと主張し、いつも結論は出ないまま。

ライムンダが自宅に帰ってくると、夫パコ(アントニオ・デ・ラ・トーレ)が仕事にも行かずにサッカーのテレビ中継を見ていて、勤め先をクビになったと打ち明ける。
空港で掃除や洗濯などの雑役をしているライムンダは、仕方なく翌日の日曜も出勤することにしたが、仕事中に娘パウラの携帯電話を何度鳴らしても応答がない。

その夜、パウラは雨の中、ずぶ濡れになりながらバス停の前でライムンダの帰りを待っていた。
そして、ふたりして家に帰ってみると、ダイニングルームに血まみれになったパコの死体が横たわっていたのだ。

いったい、自分が働きに出ている間、家の中で何があったのか、ライムンダがパウラから事情を聞き出した矢先、姉ソーレから電話が入り、伯母が急死したと告げられる。
葬儀の手配はアグスティーナがすべて引き受けてくれ、本来ならライムンダも娘を連れて葬儀に列席しなければならないところだが、とてもそうするわけにはいかず、夫が死んだことも、その経緯も話せない。

ライムンダはやむなく「私、胆嚢の緊急手術を受けなきゃならないから」と嘘をつき、アグスティーナにも電話で言い訳をして葬儀を欠席すると告げる。
仕方なくひとりでラ・マンチャへ帰ったソーレは、3年半前に死んだはずの母イレーネ(カルメン・マウラ)に伯母の家でばったり出食わし、驚愕する。

さらに、イレーネがすぐに姿を隠した直後、アグスティーナがソーレに対し、伯母は亡くなるまで「イレーネの〝幽霊〟に面倒を見てもらっていたの」と告白。
ソーレはアグスティーナに、「そんなことあるはずがない、あなた気が触れたんじゃないの?」と問いかけるが、アグスティーナは「村中の人がみんな知っていることだから」と真顔で言い続ける。

これまたいったいどういうことなのか、ソーレが首を捻りながら車を運転してマドリードに帰ってくると、今度はトランクから秘かに忍び込んでいたイレーネが出てきた。
果たして、この母は幽霊なのか、それとも本当は生きていたのか、アルモドバルはいつものほのぼのしたタッチで3世代に渡る母と娘の物語を綴ってゆく。

彼女たちの背景に隠された真相ははっきり言っておぞましく、親子で本作を観るには注意を要するレベルだが、終わった後はやはり、いい映画を観たなあ、という印象が胸に残り、自分も親子の絆を大切にしなければ、と思わずにはいられない。
今年の暮れは、俺も何とか実家に帰りたいものだ。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

115『雨の訪問者』(1970年/伊、仏)A※
114『カサンドラ・クロス』(1976年/西独、伊、英)B※
113『イエスタデイ』(2019年/英、米)B
112『ペイン・アンド・グローリー』(2019年/西)A
111『バンクシーを盗んだ男』(2017年/英、伊)B
110『ザ・ヤクザ』(1974年/米)A
109『健さん』(2016年/レスぺ)B
108『ゴルゴ13』(1973年/東映)D
107『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015年/伊)B※
106『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』(2020年/米)A
105『真犯人』(2019年/韓)B
104『ダイヤルM』(1998年/米)B※
103『ダイヤルMを廻せ!』(1954年/米)A
102『私は告白する』(1953年/米)A
101『黄泉がえり』(2003年/東宝)B
100『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994年/米)B
99『ワンダーウーマン 1984』(2020年/米)B
98『博士と狂人』(2019年/英、愛、仏、氷)C
97『追悼のメロディ』(1976年/仏)A※
96『デ・パルマ』(2015年/米)B
95『ブルース・スプリングスティーン 闇に吠える街 30周年記念ライブ2009』(2009年/米)B
94『ブルース・スプリングスティーン ライブ・イン・バルセロナ』(2003年/米)A
93『ブルース・スプリングスティーン ライブ・イン・ニューオリンズ2006~ニューオリンズ・ジャズ・フェスティバル』(2006年/米)B
92『ウエスタン・スターズ』(2019年/米)B
91『水上のフライト』(2020年/KADOKAWA)C
90『太陽は動かない』(2021年/ワーナー・ブラザース)C
89『ファナティック ハリウッドの狂愛者』(2019年/米)C
88『ミッドウェイ』(2019年/米、中、香、加)B
87『意志の勝利』(1934年/独)A
86『美の祭典』(1938年/独)B
85『民族の祭典』(1938年/独)A
84『お名前はアドルフ?』(2018年/独)B
83『黒い司法 0%からの奇跡』(2019年/米)A
82『野球少女』(2019年/韓)B
81『タイ・カップ』(1994年/米)A※
80『ゲット・アウト』(2017年/米)B※
79『アス』(2019年/米)C
78『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(2018年/米)C
77『キング・オブ・ポルノ』(2000年/米)B※
76『怒りの葡萄』(1940年/米)A
75『パブリック 図書館の奇跡』(2018年/米)A
74『バクラウ 地図から消された村』(2019年/伯、仏)B
73『そして父になる』(2013年/ギャガ)A※
72『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
71『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
70『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
69『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
68『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
67『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
66『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
65『メメント』(2000年/米)B
64『プレステージ』(2006年/米)B
63『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B※
4『宇宙戦争』(1953年/米)B※
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)


スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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