『野球部に花束を』(WOWOW)😉

99分 2022年 日活

クロマツテツロウ氏による同名原作漫画(秋田書店/少年チャンピオンコミックス全9巻)は第4巻まで出た6〜7年前、非常に面白く読んだ記憶がある。
当時、週刊グランドジャンプ(集英社)でクロマツ氏作画、僕が原作で読切野球漫画をつくる企画が持ち上がり、担当の編集さんから、参考までに読んでおいてもらいたいと渡されたんですよ。

主人公・黒田鉄平(醍醐虎汰朗)は中学校まで野球をやっていたが、東京都立三鷹東高校に進学すると、ナンパでチャラい高校生活を目指して茶髪に染める。
ところが、同じクラスの檜垣主圭(黒羽麻璃央)、亀井大作(駒木根隆介)が野球部にスカウトされている場に居合わせ、ライバル心を燃やして自ら野球部に入部。

茶髪をバリカンで刈り落とされる〝新人歓迎会〟を手始めに、野球部ならではの理不尽な出来事、監督や先輩たちに無体な仕打ちを受けながら、それでも鉄平たちは決して根を上げようとしない。
そんな彼らの努力が報われ、試合で劇的な勝利を収めるかというとそんなことはなく、地区予選で私立の強豪校に実力格差通りの苦戦を強いられる。

そうしたシビアなストーリー展開に加えて、1年生部員に先輩の2年生、3年生がどう見えるか、という実感をリアルに再現しているところが特筆に値する。
昔も今も野球部員は普通の高校生に比べ、実年齢より老けて見えるのが常だが、1年生にとっての3年生はほぼおっさんに近いと言っても過言ではない。

それは先輩たちが無意識のうちにガラの悪い監督の影響を受け、その言動を真似するようになるからだ。
と、本編中に何度か挟まる「野球部あるある」コーナーの解説者・里崎智也氏の指摘には思わず膝をたたき、ウンウンとうなずいてしまいました。

ただし、この夏、〝非坊主頭〟の慶應が甲子園で旋風を巻き起こした後では、本作の内容がいささか古びて見えるのも確かで、最近の高校野球ファンからどれほど共感を得られるかはわからない。
クロマツ氏にはそんな今時の高校野球部をまた新たに描いてほしい、と希望します。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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