『イギリスから来た男』(WOWOW)😉

The Limey
89分 1999年 アメリカ=アルティザン・エンターテインメント
日本公開:2000年 配給:ザナドゥー

スティーヴン・ソダーバーグはもともと、極めて作家性の強い映画監督だったように思う。
アメリカ映画ではなくフランス映画のような長編映画デビュー作、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『セックスと嘘とビデオテープ』(1989年)を初めて観たときの衝撃と感動はいまだに忘れ難い。

しかし、その後は長らくスランプに陥っていたそうで、復活した10年後には大手スタジオに拠点を置く商業監督になっていた。
が、だからと言ってかつての作家性が失われたわけではなく、『オーシャンズ11』シリーズ(2001年〜)のようなアクション・コメディにおいても随所にデビュー当時の才気やセンスを感じさせる。

この『イギリスから来た男』は、そんなソダーバーグが復活したばかりのころに撮った1本。
イギリスの刑務所を出所したばかりの元強盗犯ウィルソン(テレンス・スタンプ)が、アメリカにやってきて自分の娘を殺した音楽プロデューサー、テリー・ヴァレンタイン(ピーター・フォンダ)と対決する。

ストーリー自体はまことに単純で、結末も最初から読めているのだが、ベテランのスタンプとフォンダの存在感を最大限に生かした演出、現在・過去・未来を行き来するカットバックの妙が冴え渡り、ヘミングウェイやハメットの短編のような切れ味を感じさせる。
フォンダの護衛役で『バニシング・ポイント』(1971年)のバリー・ニューマンが出演しているのも僕のようなオールドファンにはうれしい。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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