『実録・私設銀座警察』(WOWOW)😉

94分 1973年 東映

前項『広島仁義 人質奪回作戦』(1976年)と同じく『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)のWOWOW初放送に合わせてオンエアされた1970年代の東映実録路線の一本。
終戦直後の昭和21(1946)年、復員してきた若者たちが銀座に根を張る暴力団の縄張を乗っ取り、「私設警察」となってのし上がるが、やがて仲間割れを起こして自滅してゆく。

というメインストーリーからして『仁義なき戦い』シリーズ(1973〜1974年)にそっくりで、日本が荒廃と混乱の只中にあったこの時代は、全国のあちこちでならず者たちが似たような抗争を繰り広げていたんでしょうね。
「私設警察」の主要メンバーを演じるのは安藤昇、梅宮辰夫、室田日出男、葉山良二で、この4人にヒロポン中毒のヒットマン役で渡瀬恒彦がからむ。

ただし、のちに大作専門監督となる佐藤純彌が40歳で撮った本作は、深作欣二監督の『仁義』に比べると陰惨な場面が多い。
開巻、バラック街の自宅に戻ってきた渡瀬が、黒人兵とセックスしていたパンパンの恋人をたたき殺し、ハーフの赤ん坊をドブに投げ捨てるシーンからして非常に強烈。

渡瀬が葉山の命令を受けて安藤を銃撃する場面では、指が吹っ飛んで額に穴が空くところをクローズアップで撮影。
リンチで血みどろにされたクラブ経営者・内田朝雄が養豚場に投げ込まれ、豚の餌になってしまうあたり、いま観ると『孤狼の血』シリーズの白石和彌監督はこういうシーンにインスパイアされたのかもしれないな、と思わせる。

玉石混交だった東映実録路線の中では、比較的出来の良いほうに入れていいだろう。
とくに、元本職の極道だった安藤が、戦後になって企業人という表の顔を持つ〝近代ヤクザ〟の元祖みたいな役を熱演しているのが印象に残る。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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