プロ野球中継を聴くならラジオに限る⚾️📻

最近愛用しているソニー製ラジオ

コロナ禍以降、取材規制やら人数制限やらで球場へ足を運ぶことが減ったぶん、テレビ中継を見ながらラジオ中継を聴く機会が増えました。
僕がこの仕事を始めた昭和の終わりから平成の始めは、これが通の観戦方法と言われていて、球場の記者席でもラジオのイヤホンを耳に突っ込んでいる記者が多かった。

僕も含めてそういう記者が年々減っていったのは、この仕事も平成年間の途中からデジタル化が進み、パソコンの電磁波の影響でラジオ中継に雑音が混じるようになったころだと記憶する。
スマホが普及してからはradikoで聴くことができるようになったものの、実際の試合進行より5分ぐらい遅くなるので、球場では聴く意味がない。

しかし、久しぶりにじっくりラジオ中継を聴いていると、古い人間のせいか、ついつい引き込まれてしまう。
とくに、きのうのニッポン放送、実況・松本秀夫さん、解説・江本孟紀さんの中継は大変聴き応えがありました。

例えば、初回2死一、二塁、オスナの三塁線を破る打球が微妙な判定でフェアと判定され、ヤクルトが2点を先制した場面。
松本さんがすかさず1978年の日本シリーズ第7戦、大杉勝男さんの大飛球がホームランと判定されてヤクルトが日本一となった試合を持ち出した。

「奇しくも、あれがきょうと同じ10月22日だったんですよ。
私は高校2年生で、後楽園球場のライトスタンドで見ておりましたが」

すると江本さんが、「そうそう、あれからいろいろとうるさいことを言うようになったんですよね」。
「ほら、レフトとライトのポールを無闇に高くしたりとか、あちこちでそんな対策をやり始めたでしょ」と指摘されたときは、あったなあ、と思わずひとりで相槌を打ってしまった。

現代ならリクエスト制度、リプレー検証があるから、ファウルで試合再開となるところ。
しかし、現役時代の1973年、プレーオフから日本シリーズまで先発と抑えでフル回転した江本さんは、すっかり定着したこの制度に意を唱える。

「いちいちそんな細かいことやらなくても、もっと大らかでいいと思いますよ、野球は。
昔の球場なんて、両翼90メートルとフェンスに書いてあっても、実際に測ってみたら85.5メートルしかなかったとか、そんなところがいっぱいありましたから」

さらに試合が進んで、ヤクルトの先発投手・小川泰弘の間合いの長さが話題になったとき。
イラついているらしい松本さんに「いくら松本さんでも、投げてないのに、投げました!って言うわけにはいかないもんね」と江本さんがツッコミを入れると、「天国の深澤(弘)さんに怒られます」と答えた松本さんのウケもよかった。

深澤弘さんは昨年亡くなった元ニッポン放送の名アナウンサー。
こういう内輪ネタや楽屋オチをさりげなく織り交ぜて、顔の見えないリスナーとの間に〝身内感〟を醸し出せるのもラジオ中継のいいところでしょうね。

ところで、そんなニッポン放送の中継を楽しみながらフジテレビの中継を見ていて、大いに気になったことがひとつ。
明らかに投手の投球1球ぶん、野手の守備1プレーぶん、テレビのほうが遅いんですよ。

毎度毎度、投球の判定や打席の結果がテレビに映るのは、松本アナが「ボール、フォアボール!」「ライトフライ! もうひと伸び足りませんでした」などと結果を伝えたあと。
いくらラジオ中継が面白くても、これだけはやっぱり興醒めと言わざるを得ません。

衛星放送ならごく普通の現象だけど、きのうのテレビ中継は地上波だからなあ。
どうしてこうなっちゃってるのか、原因をご存知の方は教えてください。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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