『賭博常習者』園部晃三😁🤔☺️🤓

発行:講談社 第1刷:2021年9月30日 定価1700円=税別

昔馴染みの編集さんに、「たまには小説も読んだら? この本なんか赤坂さん向きだよ」と勧められ、年末年始休暇中に広島県竹原市の実家で読んだ本。
いきなり一人称の主人公が8歳で初めて有馬記念の馬券を買い、見事に勝つ場面から始まって、俺、ギャンブルは一切やらないんだけどなあ、と気乗りせずに読み進めるうち、どんどん引き込まれていった。

北関東に生まれ育った主人公コウスケは著者の分身で、競走馬の育成牧場を営む叔父の手ほどきを受け、高校時代に地元の競馬場に入り浸るようになる。
家から遠い高校に通うため、親に与えられたアパートで暮らしていたから高校はサボり放題。

近所のスナックでバーテンダーのアルバイトをしているうち、常連客のヤクザ・イワヤに可愛がられるようになり、店のママ・ヒロミともデキて、まともな高校生活から完全にドロップアウト。
それでも荒んだ生活に落ち込むことなく、高校在学中に単身アメリカのテキサスに渡り、幼いころから叔父に鍛えられた乗馬の技術、馬を見る目、イワヤに見込まれた博才で青春時代を謳歌している。

やがて、怖いもの知らずの経験談を短編小説にして小説雑誌の新人賞を受賞し、まだインターネットが普及するはるか昔、出版業界も隆盛を極めていた時代とあって次々に仕事が舞い込んで、一躍有名ライターとなった。
しかし、そんな自慢話で終わるのなら小説になるはずがなく、放埒な生活といい加減な金銭感覚が祟り、経営していた乗馬クラブが倒産した上、結婚生活も破綻。

散々な目に遭って40代で車上生活者になりながら、手元に金が転がり込むたび、後先考えずに博打に走ってしまう「賭博常習者」の性と業が延々と描かれる。
まだこういう生き方をしている男がいて、濃厚な昭和の匂いとともに、この時代に生きた人間ならではのある種の潔さと爽やかさを感じさせる小説でした。

😁🤔☺️🤓

2022読書目録
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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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