『最後の決闘裁判』(WOWOW)😉

The Last Duel
153分 2021年 イギリス、アメリカ=20世紀スタジオ 日本配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

「決闘裁判」とは、通常の裁判で告訴事件が無罪か有罪かの判断がつきかねた場合、原告と被告が決闘して勝ったほう(つまり生き残ったほう)の勝訴とする、という制度である。
6世紀のブルグント王国(現在のフランス、スイスにまたがった地域)で始まり、10〜12世紀にはヨーロッパの各地で行われ、決闘は貴族階級の見せ物としても大変な人気を集めていたという。

負けたほう(つまり死んだほう)はその場で裸にされ、街中の刑場でしばらく晒し者にされた。
また、負けたほうの妻が証人として事件にかかわる証言をしていた場合、妻も偽証罪に問われることになっており、裸にされて首枷を嵌められ、街中の立ち木につながれて火あぶりにされる決まりだった。

この残酷な制度は13世紀に入ってヨーロッパ諸国で次々に禁止されたが、フランスやイギリスでは貴族に人気があったからか、14世紀まで続けられていたという。
本作は、1386年12月29日、フランスで最後に行われた決闘裁判のてんまつを描いたエリック・ジェイガーのノンフィクション『決闘裁判 世界を変えた法廷スキャンダル』(邦訳2007年/早川書房)を、リドリー・スコット監督が映画化した作品。

裁判の当事者はすべて実在の人物で、原告は妻マルグリット(ジョディ・カマー)を強姦されたと訴えた騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)、被告は無実を主張する従騎士ジャック・ル・グリ(アダム・ドライヴァー)。
脚本はシナリオライターのベテラン、ニコール・ホロフセナー、製作にも携わっている主役デイモン、製作とアランソン伯ピエール2世役のベン・アフレックの3人がかりである。

構成は3部に分けられており、決闘裁判に至るまでの過程と人間関係の変化が、ジャン、ジャック、マルグリットと、それぞれの視点から描かれている。
映画ファンならすぐに黒澤明の『羅生門』(1950年)を連想する手法で、同じ出来事が各人によって様々に異なっているのかと思ったのだが、レイプ事件や様々な人間関係を詳細に伝えるのがスコットやホロフセナーの目的だったようで、それほど極端な違いはなかった。

そのため、マルグリットがル・グリに犯されるシーンをはじめ、まったく同じ場面が2〜3度繰り返される構成はいささかくどく感じられる。
事件の細部を再現することにこだわったあまり、冗長に感じられる部分も少なくなく、ダブる場面を思い切ってカットしたほうが2時間半超の上映時間を短縮し、もっと締まった作品にすることができたのではないか。

完成度自体は高く、キャストもスタッフも豪華版で、クライマックスの決闘も迫力たっぷり。
重厚感に満ちた仕上がりはさすが巨匠リドリー・スコットというところだが、演出にほとんど遊びがなく、名手ダリウス・ウォルスキーが撮影した画面も終始暗くどんよりしており、観ているうちにだんだん気分が沈んでくることも否定し難い。

だからか、アメリカでの興行成績は惨敗に終わったそうである。
スコット監督やデイモン、ドライヴァーのファンには大いに見応えがあるだろうけどね。

オススメ度B。

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※再見、及び旧サイトからの再録

3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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