新人王候補・奥川vs.元新人王・東+新人王候補・牧⚾️

ヤクルトの試合前練習

きのう飯能でシャカリキになって走ったせいか、今朝は久しぶりに右足が攣って目を覚ました。
起きてからもしばらくは身体のあちこちに張りが感じられ、いつものNHK『テレビ体操』と朝散歩をしてもなかなかほぐれてくれない。

そんな老体に自分で鞭打って、きょうからは神宮でヤクルト-DeNA3連戦の取材である。
ここにきて一躍首位に浮上したヤクルト、DeNAは対戦成績14勝4敗2引き分けと貯金10を稼がせてもらっている一番のカモだ。

が、優勝争いの大詰めを迎えると、得てしてこういうお得意さんに足元をすくわれるもの。
DeNAの前身・大洋の監督だった三原脩は、カモにしていたヤクルトの前身・国鉄に敗れた試合後、「死に馬に蹴られた」と吐き捨て、国鉄の怒りを買って失速し、優勝をライバル阪神にさらわれた、という故事もある(ただし必ずしも正確な史実ではない)。

試合前、談笑するヤクルト村上(左)、DeNA伊勢

試合前には九州学院出身のヤクルト村上が、同校の先輩・DeNA伊勢に挨拶に来てしばし談笑。
村上は2019年の新人王で、このカードは新人王がらみの見どころが多い。

まず、ヤクルトの先発投手、2年目の奥川恭伸がここまで7勝を挙げ、一躍新人王候補に浮上中。
球団新人記録26セーブを挙げた広島・栗林良吏をはじめ、阪神・佐藤輝明、中野拓夢と強力なライバルは多いが、ヤクルトが優勝し、奥川の勝ち星が2桁に達したら、彼に一票を投じる記者も出てくるはず。

一方、DeNAには新人として史上初のサイクル安打、球団の新人最多二塁打記録など、様々な新人記録を達成している牧秀悟がいる。
さらに、この日の先発投手は2018年の新人王で、左ヒジのトミー・ジョン手術から2年ぶりの復帰登板となった東克樹。

個人的に大いに期待して始まった試合は、予想に違わぬ締まった投手戦となった。
最初のポイントは二回1死無走者での奥川、牧の新人王候補対決で、奥川の149㎞真っ直ぐを牧がセンター前へ弾き返し、これで桑田武が持つ球団新人記録、シーズン117安打に並んだ。

ヤクルト伊藤コーチも試合中のコメントで指摘していたように、きょうの奥川の状態は決してよくなかった。
この投手は調子が悪いとヒジが下がり、本来のスリークォーターからサイドスローに近くなって、真っ直ぐがシュート回転してしまう。

しかし、そのぶん、スライダーとフォークで相手打者のタイミングを外し、かわして打ち取る組み立てが実にうまい。
中村悠平のリードによるところも大きいのだろうが、やはり奥川の持ち前の制球力、ピンチでも常に冷静でいられるメンタルの強さがあればこそだろう。

一方、DeNA東は四回まで1安打1四球と、奥川に優るとも劣らぬ好投を続けていながら、五回に来てその奥川にしてやられた。
1死一、二塁で打順が回ってきた奥川にチェンジアップを投じたところ、バスターで満塁とされ、2死を取った直後、青木にカットボールをレフトスタンドへ運ばれる満塁ホームラン。

東はここまで、4回3分の2、88球で降板となり、元新人王対今季新人王候補の初対決は終了。
奥川も6回3安打無失点、84球で交代となったのは、身体がまだプロになりきれていない20歳に対する高津監督、伊藤コーチら首脳陣の配慮だろう。

8勝目を挙げた奥川はヒーローインタビューのお立ち台で、「きょうは悪いなりにしっかりゲームを作ろうと心がけていたので、はい、しっかりゲームを作れてよかったです」といつも通りの実に丁重なコメント。
前回の巨人戦も今回のDeNA戦も「調子が悪い」と言いながらしっかり抑えているが、本当に調子が悪いのかと突っ込まれると、「調子が良くても打たれることはあるので、悪いなりに投げられてよかったです」。

これでヤクルトは13戦負け無しの9連勝。
奥川に続いてお立ち台に立った打のヒーロー青木は「その話はまだ早いですよ」と苦笑いしていたけれど、6年ぶりの優勝がいよいよ現実味を帯びてきましたね。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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