『007 黄金銃を持つ男』(WOWOW)

The Man with the Golden Gun

 WOWOWでの再放送を機に、個人的にこれまで未見だったノーカット字幕版を見ておこう! と思い立った007シリーズ作品第3弾。
 監督は『ゴールドフィンガー』(1964年)、『死ぬのは奴らだ』(1973年)で楽しませてくれたガイ・ハミルトンだが、最後の007映画となった本作は最低の出来映えに終わっている。

 まあ、それがわかっていたから、いままで見ていなかったんだけどね。
 先日、この欄でダニエル・クレイグ版ボンドを評して「ショーン・コネリーやロジャー・ムーアに比べると、どうしてもボンドに見えない」と書いたら、ツイッターのフォロワーからこんなリプが寄せられた。

 恐らく、私とは息子ほどトシの違うアカウントの方曰く、
「ぼくはダニエル・クレイグしか知らないので、コネリーやムーアのボンドも見てみようと思います」

 この人が本作を見たら、マイク・マイヤーズのコメディー『オースティン・パワーズ』(1997年)みたいな〝おバカ映画〟としか思えないんじゃないだろうか。
 クリストファー・リー演じる悪役スカラマンガに乳頭が3つあるという設定からしていかにもおバカっぽく、純金の万年筆、ライター、カフスボタンを組み立てて作る「黄金銃」も弾を一発しか撃てないのだから何の役に立つのかわからない。

 南シナ海の孤島に暮らすこのスカラマンガは小人のニック・ナック(エルヴェ・ヴィルシェーズ)を召使いとして雇っており、彼がスカラマンガの財産目当てに連れてくる殺し屋を返り討ちにオープニングも、セットやリーのコスチューム(ジャージ!)が安っぽくて苦笑させられる。
 まるでピーター・セラーズの〈ピンク・パンサー〉シリーズ(1963~78年)のクルーゾー警部とケイトーじゃねーか、と書いても、若い人にはますますチンプンカンプンだろうなあ。

 ボンドガールのグッドナイトを演じるブリット・エクランドがまた、ボンドと同じ諜報部員とは思えないおバカキャラ。
 ビキニ姿でスカラマンガのアジトをうろつき回ったあげく、ヒップで自爆装置の起爆スイッチを入れてしまう、というシーンもほとんどギャグにしか見えない。

 劇場公開当時の見どころはボンドカー、ホーネット・ハッチバックがきりもみジャンプで川を越えるシーン、スカラマンガのマタドール・キャッシーニ・クーペが翼を装着して飛行機となるところで、これはテレビCMでもよく流された。
 しかし、このあたりもやはり、いま見るといかにもチャチな印象を受ける。

 オススメ度C。

007

(1974年 イギリス、アメリカ=ユナイテッド・アーティスツ 124分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

121『チェンジリング』(2008年/米)A
120『エル ELLE』(2016年/仏、白、独)A
119『女王陛下の007』(1969年/英、米)C
118『007 スペクター』(2015年/英、米)B
117『007 慰めの報酬』(2008年/英、米)C
116『007 カジノ・ロワイヤル』(2006年/英、米)C
115『暴走パニック 大激突』(1976年/東映)C
114『お尋ね者七人』(1966年/東映)B
113『忍者狩り』(1964年/東映)C
112『十兵衛暗殺剣』(1964年/東映)B
111『十三人の刺客』(1963年/東映)B
110『地上最大のショウ』(1952年/米)A
109『スリーピー・ホロウ』(1999年/米)A
108『モネ・ゲーム』(2012年/米)C
107『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017年/米)A
106『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』(2016年/米)C
105『ジェイソン・ボーン』(2016年/米)A
104『ボーン・レガシー』(2012年/米)C
103『ハンス・ジマー ライブ・イン・プラハ』(2017年/米)B
102『夕陽の群盗』(1972年/米)B
101『アウトロー』(1976年/米)A
100『スラップ・ショット』(1977年/米)B
99『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(2017年/東宝)C
98『女囚さそり 701号怨み節』(1973年/東映)B
97『女囚さそり けもの部屋』(1973年/東映)B
96『女囚さそり 第41雑居房』(1972年/東映)B
95『女囚701号 さそり』(1972年/東映)A
94『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』(1961年/東映)C
93『三度目の殺人』(2017年/東宝)C
92『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』(2011年/米)B
91『エイリアン:コヴェナント』(2017年/米)B
90『プロメテウス』(2012年/米)B
89『アンドロメダ… 』(1971年/米)A
88『亡霊怪猫屋敷』(1958年/新東宝)B
87『怪談かさねが渕 』(1957年/新東宝)B
86『一寸法師』(1955年/新東宝)C
85『黒蜥蜴』(1962年/大映)B
84『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976年/日活)D
83『狼やくざ 葬いは俺が出す』(1972年/東映)B
82『博徒七人』(1966年/東映)A
81『泥棒成金』(1955年/米)A
80『スペース カウボーイ』(2000年/米)C
79『ソイレント・グリーン』(1973年/米)B
78『狼は天使の匂い』(1972年/仏)B
77『さらば友よ』(1968年/仏、伊)B
76『傷だらけの栄光』(1956年/米)A
75『ハンズ・オブ・ストーン』(2016年/米、巴)B
74『ダンケルク』(2017年/英、米、仏、蘭)B
73『墨攻』(2006年/中、日、香、韓) A
72『関ヶ原』(2017年/東宝)
71『後妻業の女』(2016年/東宝)B
70『ショートウェーブ』(2016年/米)D
69『Uターン』(1997年/米)B
68『ミラーズ・クロッシング』(1990年/米)C
67『シザーハンズ』(1990年/米)A
66『グーニーズ』(1985年/米)B
65『ワンダーウーマン』(2017年/米)B
64『ハクソー・リッジ』(2016年/米)A
63『リリーのすべて』(2016年/米)A
62『永い言い訳』(2016年/アスミック・エース)A
61『強盗放火殺人囚』(1975年/東映)C
60『暴動島根刑務所』(1975年/東映)B
59『脱獄広島殺人囚』(1974年/東映)A
58『893愚連隊』(1966年/東映)B
57『妖術武芸帳』(1969年/TBS、東映)B
56『猿の惑星』(1968年/米)A
55『アンドロメダ・ストレイン』(2008年/米)C
54『ヘイル、シーザー!』(2016年/米)B
53『パトリオット・デイ』(2016年/米)A
52『北陸代理戦争』(1977年/東映)A
51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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