『シナトラ:オール・オア・ナッシング・アット・オール』(Netflix)🤗😱

Frank Sinatra: All or Nothing At All
2エピソード 全244分 Netflix 2015年

エルビス・プレスリーの登場以前にアメリカのポップミュージック・シーンを席巻し、今なお伝説的存在として語り継がれているフランク・シナトラの生涯を描いたドキュメンタリー。
中学生の頃から何度となく歌を聴いたり映画を観たりしてはいたが、これほど詳しいバイオグラフィーを観たのは初めてだった。

個人的な興味の焦点は何と言っても、スランプからの再起を期したシナトラが『地上より永遠に』(1953)の役を得るため、イタリアン・マフィアのサム・ジアンカーナに頼み込んでプロデューサーを脅迫してもらったという逸話の真偽。
このエピソードは『ゴッドファーザー』(1972)で描かれており、マフィアがプロデューサーの愛馬の首を切断し、プロデューサーの就寝中にベッドに突っ込むという凄惨なシーンになっていた。

しかし、本作のコメンテーター、シナトラとの交友を綴った著書がある作家ピート・ハミルは「作り話だ」と完全否定。
ただし、ジアンカーナやラッキー・ルチアーノら、大物マフィアとの親密な関係についてはある程度尺を割いて詳細に語られている。

また、ロックンロールのスーパースター、エルビス・プレスリーが大嫌いだったにもかかわらず、テレビ番組で共演せざるを得なくなったくだりも大きな見どころ。
それだけ、ポップミュージックのキングとしての自負が強かったことがよくわかる。

シナトラの死後もゴシップ記事のネタになったケネディ一家との間に起こった〝事件〟も興味深い。
シナトラが弟分のサミー・デイヴィス・ジュニアの結婚式へ出席するようケネディに求めたら、異人種間の結婚には反対だという信条から、これを断ったというのだ。

「このケネディの態度には深く傷つき、次第に疎遠になっていった」と、息子のシナトラ・ジュニアや娘のナンシーが証言。
まだまだ厳しい人種差別がまかり通っていた時代、シナトラが信念を持って人種を越えた友人関係を築いていたことがわかる。

ただ一つ残念なのは、シナトラの俳優としての名演についてほとんど触れていないこと。
エピソードの数を増やしてでも、先述の『地上より永遠に』をはじめ、アカデミー主演男優賞にノミネートされた『黄金の腕』(1955)、シナトラ一家総出演の『オーシャンと十一人の仲間』(1960)の裏話を紹介してほしかった。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。2010〜2026年、東京スポーツでコラムや野球記事を連載。 日本文藝家協会会員。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
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