『ルポ特殊詐欺無法地帯 ミャンマーに潜む犯罪集団に迫る』藤川大樹😁😳😖🤓

文藝春秋 文春新書 定価1100円=税別
第1刷:2026年1月20日

最近、タイ・カンボジア国境付近にある特殊詐欺の拠点が警察によってマスコミに公開され、日本でも大きな話題になった。
東京ドーム17個分の敷地に、拉致して詐欺に従事させる人々の収容所をはじめ、詐欺メールを発信するスマホとパソコンを完備したワーキングルーム、フェイク動画を撮影する警察署内のセット、カネを稼げない人間を拷問して閉じ込める独房、さらには詐欺の代わりに臓器売買を強要するための手術室まで完備されている。

そこで本書を手に取ってみたのだが、「犯罪集団に迫る」というタイトルや「無法地帯への潜入」という帯のコピーとはいささか異なる内容となっている。
冒頭に特殊詐欺グループ現役幹部とのインタビューが出てくるので、すぐさま「犯罪集団」の内情へ切り込んでいくのかと思いきや、中日新聞の現役記者である著者は、なぜミャンマーに「無法地帯」ができあがったのか、当地の歴史的背景や内戦の現状を説明することに紙数を費やしていく。

それ自体は非常に興味深い内容であり、泥沼化している国軍と抵抗勢力の内戦、民兵たちが様々なグループに分かれている内情、その背後で影響力を行使する大国・中国の存在と、非常に複雑な政情と経済的事情の中で特殊詐欺の拠点が生まれたことがよくわかる。
文字通り現地で体を張って取材した描写も迫力に満ちていて、大変読み応えがあった。

ただし、それだけに、タイトルにあるような犯罪集団の「実態」に迫る寸前でとどまっているような憾みも残る。
東南アジアと特殊詐欺は著者のライフワークでもあるのだろうから、ぜひ続編を望みたい。

😁😳😖🤓

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。2010〜2026年、東京スポーツでコラムや野球記事を連載。 日本文藝家協会会員。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
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