2011年、東京野球ブックフェアで購入した古書の1冊。
ぼくがまだ野球記者になったばかりの1988年、東京書籍から刊行されていた〈シリーズ・ザ・スポーツノンフィクション〉の第3弾である。
当時、このシリーズは3冊ほど読んでいて、本書もそのうち買って読もうと思っていたら、シリーズごと絶版になってしまった。
日本では売れなかったんだろうな。残念。
著者のロジャー・カーンはアメリカの高名なベースボール・ライターで、1950年代にヘラルド・トリビューンで黄金時代のブルックリン・ドジャースを担当したコラムニストとして知られている。
そのカーンが功成り名を遂げて56歳となった1983年、一念発起してマイナーリーグの1Aチーム、ブルーソックスを買収し、リーグ優勝を目指して戦ったシーズンの回顧録。
ブルーソックスはメジャーリーグの下部組織ではなく、現代で言えばインディペンデント・リーグの球団のように独立したチームだった。
だからカーンのような部外者がオーナーに収まることができたわけだが、そのぶん、財政基盤は無きに等しく、赤字経営が慢性化しており、チームにもろくな選手がいない。
球団事務所はトレーラー・ハウス、移動に使うのは小学生用のスクール・バス、マイナーリーガーにしてはトウの立った20代半ばの選手たちはみんなメジャー球団の下部組織をクビになった落ちこぼればかり。
チームを買ったはいいものの、フランチャイズさえ決まっておらず、チームを誘致している市に足を運び、役人を相手に安く球場を借りる交渉から始めなければならない始末だ。
ようやくユーティカという小さな田舎町に本拠地を定めたら、前の経営者が電気代を払っていなかったため、ナイターをやろうにも照明灯が使えない。
こんなチームがまさかの開幕ダッシュに成功、一時は2位に8ゲーム差をつけて首位を独走する。
ところが、ペナントレースの終盤にきて失速、首位から滑り落ちたのみならず、錯乱状態になった監督が審判に石を投げつける暴挙まで働き、一転して窮地に立たされた。
さすが円熟の域に達したスポーツライターの大御所だけあり、様々なドラマが繰り広げられる球団経営の内幕をあっという間に読ませてしまう。
ブルーソックスを勝たせたくないリーグ会長に執拗な嫌がらせを受け、優勝のかかったシーズンの大詰めで強行スケジュールを強いられるクライマックスは、読んでいるこちらにカーンの怒りが乗り移りそうになるほど。
連日ダブルヘッダーどころか、トリプルヘッダーまで戦わなければならなくなったブルーソックスはどうなるのか…興味のある方は古書を探してみてください。
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旧サイト:2012年12月19日(水)Pick-up記事を再録、修正