『アイ・アム まきもと』(WOWOW)🤗

104分 2022年 ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント

阿部サダヲ演じる主人公・牧本壮は庄内市という山形県庄内町がモデルと思しき市役所に勤める地方公務員。
ここには「おみおくり係」という孤独死した市民の身元を調べ、遺族に連絡し、葬儀を行った上に骨壷の保存まで行っている部署があり、牧本がひとりで切り盛りしている。

牧本はなぜか死者への思い入れが強く、遺族や身寄り探すために奔走し、警察の安置所に預けた死体をすぐ火葬にしようとはせず、顔馴染みの担当刑事・神代亨(松下洸平)をいつもイライラさせている。
さらに、狭苦しい自分のオフィスの床は、いつか遺族が引き取りに来てくれるかもしれないからと、ずっと保管してある骨壷がぎっしり。

市民福祉局の局長室のロッカーまで骨壷でいっぱいにしてしまい、業を煮やした新任の局長・小野口義久(坪倉由幸)は、強引に骨壷を無縁仏へ運ばせ、おみおくり係の廃止を決めてしまった。
そうした中、牧本は最後に預かった孤独死体、橅木孝一郎(宇崎竜童)の遺族探しに乗り出す。

かつては深刻な社会問題の一つと捉えられていた孤独死も、最近は全国的に年々増加の一途を辿っていると言われ、今や普遍的現象、つまり日常茶飯事に近く、61歳で独り身の僕にとっても明日は我が身である。
本作はその孤独死のはらむ様々な問題を描きながらも、水田伸生監督の演出はあくまでコメディーに徹しており、笑わせどころを織り交ぜたホームドラマとして作られているところが素晴らしい。

阿部はいつもながらの好演で、察しも要領も悪く、一見鈍い小役人のように見えながら、実は頑固で芯が強い牧本のキャラをしっかり表現している。
蕪木の遺族探しのくだりで重要な役割を果たす宮沢りえ、満島ひかりも相変わらずきれいでうまい。

なお、本作は2013年の英伊合作映画『おみおくりの作法』のリメイクで、元ネタとなった作品の原作を書き、監督、脚本、製作を務めたウベルト・パゾリーニの名前がエグゼクティヴ・プロデューサーとしてクレジットされている。
こういうケースはあまり前例がないはずで、どのような関わり方をしたのか、観終わった後でちょっぴり気になりました。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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