『ランボー ラスト・ブラッド』(WOWOW)🤨

Rambo: Last Blood
101分 2019年 アメリカ=ライオンズゲート 日本配給:ギャガ R15+

期待せずに観た前作『ランボー 最後の戦場』(2008年)が意外にもなかなかの快作だったので、シリーズ完結編と謳っている本作はワクワクしながら観た。
おかげで、映画とは得てしてそういうときに限ってガッカリさせられるものだ、という真理を再認識させられる羽目になりました。

前作のラストでアリゾナに残っていた実家の牧場に帰ったランボー(スタローン73歳)は、昔馴染みのマリアナ・ベルトラン(アドリアナ・バラッザ)、彼女の孫娘ガブリエラ(イヴェット・モンレアル)と平和に暮らしていたが、その孫娘をメキシコの麻薬カルテルに拉致され、救出と復讐に立ち上がる。
これは完全な私闘であり、前4作までは大なり小なりランボーが戦う重要な動機付けになっていた公的な理由や使命感がない。

しかも、前作と比較しても、血飛沫が飛び散り、内臓が抉り出される残虐な描写が増えた。
ランボーはガブリエラを拐ったエル・フラコ(パスカシオ・ロペス)を捕まえ、ナイフで肩を引き裂くと、鎖骨を掴んでへし折り、折れた骨をゆすりながらガブリエラの居場所を聞き出す。

そのガブリエラはカルテルによって麻薬漬けにされ、売春宿の役に何度もレイプされたあと、ビクトル・マルティネス(オスカル・ハエナダ)にナイフで頬をVの字に切り刻まれる。
まことに陰惨な場面で、怒り心頭に発したランボーはビクトルの自宅を襲って首をはね、アリゾナの牧場に帰る途中、路上でこれみよがしに首を放り出す。

こうして、ビクトルの兄ウーゴ(セルヒオ・ペリス=メンチェータ)率いるカルテルの傭兵部隊を牧場に誘い込むと、ランボーはあちこちに仕掛けたトラップでひとりずつ追っ手を始末していく。
このあたりは昔のマカロニウエスタン『暁の用心棒』(1967年)、香港カンフー映画『片腕カンフー対空とぶギロチン』(1975年)などの先例と同様、それなりの見せ場にはなっているので退屈はしないものの、あまりにも残酷な描写が多過ぎて後味はよろしくない。

ランボーとはもともと、アリゾナに住む孤独な青年だったのが、ベトナム戦争を起こした国家と軍隊によって殺戮マシーンに作り替えられ、自分自身が望まない戦いに引きずり込まれながら、最後には大義と正義を貫き通す、というところに独特の個性と哀感があった。
しかし、完結編の本作では髪を短く刈り、バンダナもしなければ筋肉も見せず、ただただ悪役を殺し続けるだけ。

しかも、前作と同様、血みどろにされたり、内臓を掴み出されたりされるのは、敵役の非白人ばかり。
劇場公開時、差別的な描写が多いと批判されたのもむべなるかな、である。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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