『バケモノの子』(WOWOW)😉

119分 2015年 東宝

アニメ界のヒットメーカーのひとり、細田守が監督・原作・脚本の1人3役で作り上げた2015年の話題作。
母親を亡くし、父親とも音信不通になっている主人公の少年・蓮(声・以下同=宮崎あおい)が、親戚に引き取られることを拒否し、異世界のバケモノとともにたくましく成長する姿が描かれる。

蓮を弟子にするのは異世界「渋天街」の熊徹(役所広司)で、この世界を統べる宗師・卯月(津川雅彦)の後継者の座を猪王山(山路和弘)と争っている。
宗師になるには弟子を取ることが必要とされているため、異世界に迷い込んできた蓮を勝手に「九太」と名付けて弟子にするのだが、元来粗暴な熊徹と利かん坊の蓮は喧嘩してばかり。

そんなふたりを見守っているのが、狂言回し役でもある多々良(大泉洋)と百秋坊(リリー・フランキー)。
彼らのキャラクターはビジュアルが実際の大泉やフランキーにそっくりで、ひょっとしたら細田監督がアテ書きしたのかもしれない。

蓮=九太は次第に熊徹に靡いていき、17歳の若者(染谷将太)に成長して、絶対不利と見られた猪王山との対決に臨む熊徹を応援する。
こうして蓮が異世界で新たな父子関係が築いたかと思われた矢先、彼は偶然にもふたたび現実世界に舞い戻り、楓(広瀬すず)と知り合って、現実の父親(長塚圭史)と再会を果たす。

長編アニメとしての完成度は高く、現実の渋谷を舞台に蓮と猪王山の長男・一郎彦(宮野真守)が壮大なバトルを繰り広げるクライマックスは見応えたっぷり。
その一方で、バケモノと子供の交流を描いたファンタジーには宮崎駿の『もののけ姫』(1997年)、『千と千尋の神隠し』(2001年)などの古典的名作があるため、終始既視感がつきまとう。

良心的な作品ではある半面、親子関係、バケモノと人間の友情、成長期に必要な愛情と勉強など、包含されたテーマや見せ場が多過ぎて、全体的に散漫になってしまった感もある。
スター俳優を起用したアテレコ陣は豪華版で、アニメファンなら観て損はないだろうけど、そうでもないという映画ファンが面白がれるかどうかは微妙でしょうね、と感じるのは、俺がトシ取ったからかな。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る