『ランボー 最後の戦場』(WOWOW)😉

John Rambo 
91分 2008年 アメリカ=ライオンズゲート 日本配給:ギャガ R-15

シルヴェスター・スタローンのシリーズ最新作『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年)のWOWOWテレビ初放送に合わせてオンエアされたシリーズ第4作。
このシリーズは『ランボー』(1982年)、『ランボー 怒りの脱出』(1985年)、『ランボー 怒りのアフガン』(1988年)まで、前3作を観たのはすべてテレビで、本作の劇場公開時にも足を運んでいない。

正直なところ、当時はフリーになって間もないころで忙しく、もうこの手のアクションヒーロー物を追いかけて観るようなトシでもなくなっていたからだ。
ただ、同じスタローンの『ロッキー』シリーズ(1976〜2018年)や『エクスペンダブルズ』シリーズ(2010〜2014年)はできる限り映画館で観るようにしていたんですけどね。

ランボー第1作で36歳だったスタローンも、本作ではすでに62歳。
ベトナム戦争では「たったひとりの軍隊」と謳われた米軍最強の兵士ランボーも、かつてのようにやたらと上半身裸になって筋肉を誇示したり、頭にバンダナを巻いて大暴れしたりすることもなく、タイ北部のモエイ川流域で渡し舟の船頭とヘビ狩りをしながらひっそりと暮らしている、という設定。

ちょうどそのころ、国境を隔てた隣国ミャンマーでは軍部政権の兵士たちが少数民族のカレン族を武力で弾圧し、女子供でも容赦なく虐殺した上、彼らの土地や天然資源を略奪していた。
現実にも、当時のミャンマーはのちに国家顧問となるアン・サウン・スー・チーが自宅軟禁されていて、テイン・セインが大掛かりな民族浄化に乗り出し、国際的にも大変な非難を浴びている。

ミャンマーで現実にクーデターが勃発し、軍事政権による市民への迫害が続いているいまにしてみれば、世界情勢を先取りしており、ハリウッド映画史的にも意義深い設定だった、と言えるかもしれない。
ランボー(スタローン)をはじめとするアメリカ人の登場人物が、現実の慣習としてミャンマーという言葉を使わず、旧国名「バーマ」(ビルマのこと)と言っているあたりにもリアリティが感じられ、つい最近作られた映画のように錯覚しそうになる。

このようにミャンマーが揺れている最中、ランボーの元へキリスト教系のNGO団体がやってきて、虐待されているカレン族を支援するため、モエイ川から国境を渡ってミャンマーへ連れ行ってほしいと頼み込む。
ランボーは最初のうち、「おまえたちが行っても何も変わらない」と拒否するが、NGOのメンバー、サラ・ミラー(ジュリー・ベンツ)の熱心な態度にほだされて依頼を承諾。

ランボーがNGOのメンバーをミャンマーに送り届けた数日後、彼らはカレン族の支援活動の最中、パ・ティー・ティント大佐(マウン・マウン・キン)率いるミャンマー軍の兵士たちに拉致されてしまった。
NGO救出のための傭兵部隊が組織され、ランボーは行きがかり上、今度は彼らを連れてふたたびミャンマーに潜入することになる。

ここから先は一気加勢の展開に突入し、上映時間50分過ぎから75分ぐらいまで息をもつかせずアクションシーンがつるべうちに繰り広げられる。
スタローンの演出はパワフルかつスピーディーで、クライマックスのあとは81分から早々にエンディングにつないでいるところも歯切れがいい。

しかし、ミャンマーの兵士たちばかりが首や手足を引きちぎられ、血飛沫とともに人体が破壊される連続描写の数々はかなりどぎつく、彼らを率いるティントがただひたすら卑劣で残酷な無人格キャラとして描かれているところには差別的なニュアンスも漂う。
また、最初のうちランボーを見くびっていた傭兵部隊のリーダー、ルイス(グレアム・マクダヴィッシュ)が途中から態度を豹変させる、というマッチョ映画ならではのお約束が目につくのもちょっと残念。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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