『陰の季節』横山秀夫😁😢🤓

発行:文藝春秋 文春文庫 定価490円=税別
第1刷:2001年10月10日 第39刷:2016年3月20日
単行本発行:1998年10月 文藝春秋

今年、プロ野球のキャンプ取材で宮崎、沖縄に出張していた2月、横山秀夫さんの短編集を文庫本で4冊読みました。
長編の代表作『半落ち』(2003年)、『クライマーズ・ハイ』(2004年)、『64(ロクヨン)』(2013年)は単行本で読んでいるけど、短編集を手に取ったのは今回が初めて。

巻頭の松本清張賞受賞作、直木賞候補作の表題作からいきなり引き込まれる。
本作は〈D県警シリーズ〉の第1作で、主人公が事件の捜査に当たる刑事ではなく、警務課の人事担当者というところが異色にして斬新。

主人公が定年退官する警察官に天下り先のポストを割り振っていた矢先、先にそのポストに再就職していた元幹部が、まだ辞めないとゴネる。
現役時代、極めて優秀だった元幹部は何を考えているのか、自宅を訪ねて説得を試みた主人公はやがて、想像だにしなかった真相を掴む。

『黒い線』の主人公は若い婦警の指導に当たっている婦警担当係長。
高齢者女性からバッグを奪ったひったくり犯にそっくりの似顔絵を描き、容疑者逮捕に貢献した鑑識課の若い婦警が、直後に突然無断欠勤してしまい、彼女の行方を追っている最中、警察内部のパワハラと女性差別の問題に直面する。

『半落ち』や『64』がそうだったように、横山作品は警察小説でありながら、犯罪捜査における謎解きではなく、捜査に関わる人間と職域、彼らの人間関係に主眼が置かれている。
過去の王道的ミステリーのように、読み終えてカタルシスを覚えることこそないが、独特の余韻と引っ掛かりが残って、この味を二度、三度と味わいたくなりました

😁😢🤓

2021読書目録
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4『飼う人』柳美里(2021年/文藝春秋)😁😭🤔🤓
3『JR上野駅公園口』柳美里(2014年/河出書房新社)😁😭🤔🤓
2『芸人人語』太田光(2020年/朝日新聞出版)😁🤣🤔🤓
1『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳(2000年/草思社)😁😳🤔🤓

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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