『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(WOWOW)

(Battle of the Sexes/122分 2017年 アメリカ=フォックス・サーチライト・ピクチャーズ
日本配給2018年 20世紀フォックス)

私が女子テニスに本格的に興味を抱いたのは2007年、まだ現役選手だった杉山愛さんにインタビューしたときのことである。
杉山さんの半生や戦歴はもちろん、彼女が「世界で最も明朗かつ合理的に運営されている」というWTA(女子テニス協会)の話も非常に面白かった。

最近では、昨年読んだ『マリア・シャラポワ自伝』(2017年)の赤裸々な内容にもいたく感動。
大坂なおみの活躍とも相俟ち、同じテニスとはいえ、男子と区別して考えるべき独立したジャンルなのではないか、と考えるようになっている。

では、その女子テニスはいかにして現在のような体制を確立し、世界的隆盛を誇るに至ったのか。
現在のWTAを創立し、それまでは男性中心だったテニスの世界に変革をもたらしたビリー・ジーン・キングの半生を描いたのがこの映画である。

日本ではキング夫人と呼ばれていたビリー・ジーンを、ほとんどすっぴんで演じる『ラ・ラ・ランド』(2016年)のオスカー女優エマ・ストーンも気合十分。
開巻早々、全米オープンの優勝賞金を男子12000ドル、女子1500ドルと、実に8倍もの差をつけた全米テニス協会会長ジャック・クレーマー(ビル・プルマン)に食ってかかるシーンから迫力たっぷりだ。

女子に対して差別的言辞を吐き、賞金金額は変更しないと突っぱねたクレーマーに、ビリー・ジーンは協会からの脱退と女子協会の創立を宣言。
賛同する選手を集めて全員を契約金1ドルで契約させ、第1回全米女子オープンの開催を強行する。

この記念すべき大会の冠スポンサーがなんとタバコ会社のフィリップ・モリス。
記者会見では勢ぞろいした女子選手がデモンストレーションとして新製品ヴァージニア・スリムをプカ〜ッとやる、といういまではあり得ない場面が何ともおかしい。

ただし、本作の最大の眼目は、ビリー・ジーンをテニス界の改革者として描くことには置かれていない。
それ以上に、テニスと協会の活動を通して同性愛者であることに目覚め、LGBTの代表的かつ先駆的存在として捉えること、そして賛えることにある。

クライマックスは当時55歳だったシニア男子選手ボビー・リッグス(スティーブ・カレル)とのタイトルロールの「性別間の戦い」だが、試合自体がジョークのようなもので、いまひとつ手に汗握るところまでいかない。
主演のストーンや監督夫婦ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ハリスが最も見せたかったのは、あくまでもこの試合に至るまでの経緯、ビリー・ジーンと最初の恋人マリリン・バーネット(アンドレア・ライズブロー)や夫ラリー・キング(オースティン・ストウェル)との葛藤だった。

元男子テニス選手でWTAウェアデザイナー、実は自身もゲイだったテッド・ティンリング(アラン・カミング)が、「いつかぼくたちのことが理解されるような時代が来る」とビリー・ジーンを励ます場面が非常に印象的。
正直なところ、私としては、もう少しテニスの競技と協会のあり方を詳しく描いてほしかったが。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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