『クリスティーン』(WOWOW)

Christine

『クリスティーン』(WOWOW)

 学生時代にファンだった映画監督ジョン・カーペンター中期の1本で、スティーブン・キングの同名原作を映画化したホラー作品。
 クリスティーンと名付けられた真っ赤な1958年型プリマス・フューリーが意思を持ち、次々に人を殺してゆく。

 カーペンター作品は大体1時間30~40分程度にまとめられているが、本作は珍しく2時間近い〝長尺〟。
 これは原作がベストセラー作家キングの小説で、出版前に映画化が決まっており、原作者の意向に沿った内容にしなければならなかったためらしい。

 こういう無人の車が暴れ出すというホラーの場合、キング作品では怨霊が取り憑いている設定になっているのが常で、原作の長編小説にも長々と因縁が書き込まれているという。
 が、この種の理屈付けにあまり重きを置かないカーペンターは、そうした背景をバッサリとカットし、モンスターとしてのプリマスと人間の対決に主眼を置いている。

 結果的にはこれが成功で、ほとんどダレることなくクライマックスへと突き進む直球勝負の快作に仕上がっている。
 親の反対を押し切ってクリスティーンを手に入れた気弱でオクテの高校生アーニー(キース・ゴードン)が、次第に積極的で自信満々の態度に変わってゆき、学校で一番の美女リー(アレクサンドラ・ポール)を彼女にするまでに変貌。

 アーニーを妬んだ不良グループ、バディ(ウィリアム・オストランダー)やムーチー(マルコム・ダネア)らは秘かにガレージに忍び込んでクリスティーンを破壊する。
 しかし、クリスティーンはアーニーの目の前で車体を再生させ、自分に手を出した不良たちに復讐を開始。

 このあたりはイジメられっ子だった少女が怒りを爆発させる『キャリー』(1976年)そっくりの展開。
 クライマックスはアーニーの親友デニス(ジョン・ストックウェル)がリーとタッグを組み、ショベルカーやブルドーザーに乗ってクリスティーンと対決する。

 実質的な主人公は人間ではなくプリマス・フューリーで、カーペンターはこの車を終始美しく見せることに腐心しており、これが物言わぬ車の怖さ、不気味さを強めている。
 悪霊の取り憑いた車というアイデアは『ザ・カー』(1977年)が元祖とされているが、それ以前にも『殺人ブルドーザー』(1974年)という安手のテレビ映画ながら、なかなか小気味よくまとめられた作品もある。

 しかし、おれもよくそんな映画をマメに見てるよな。
 まあ、このテの映画の中では、本作がベストでしょうね。

 オススメ度B。

(1983年 アメリカ=コロンビア・ピクチャーズ/日本公開1984年 110分)

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

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74『ダンケルク』(2017年/英、米、仏、蘭)B
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32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
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27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
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20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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