『ボーン・レガシー』(WOWOW)

The Bourne Legacy

 マット・デイモン主演、ロバート・ラドラム原作の〈ボーン・シリーズ〉、『ボーン・アイデンティティー』(2002年)、『ボーン・スプレマシー』(2004年)、『ボーン・アルティメイタム』(2007年)に続く第4作。
 パメラ・ランディ(ジョアン・アレン)、アルバート・ハーシュ博士(アルバート・フィニー)ら前3作の一部キャラクターも顔を見せるが、主役のボーン(デイモン)は登場しないスピンオフ作品である。

 ジェレミー・レナー演じる本作の主人公アーロン・クロスは、ボーンと同様にCIAの〝暗殺者養成プログラム〟によって元の人格から別人に作り変えられた〝人間兵器〟。
 ボーンを生み出した「トレッドストーン作戦」がボーンの反逆に遭って潰されため、アーロンはその後、新たに立案された「アウトカム計画」の一環として養成された。

 第3作『アルティメイタム』の終盤、ボーンによってそれらの秘密計画がマスコミに暴露されたことを受け、CIAは計画に関与した人間たちを次々に抹殺しようとしていた。
 アーロンもその標的にされるが、薬物と訓練によって培った超人的な力で追っ手を撃退、同じように暗殺されようとしていたマルタ・シェアリング博士(レイチェル・ワイズ)を救って逃亡を続ける

 監督はシリーズ前3作の脚本を担当したトニー・ギルロイが務めており、それなりに頑張ってはいるものの、ボーンに比べてアーロンのキャラクターが弱いのは如何ともし難い。
 最大の欠点は、〝自分探し〟という明確な動機を持っていたボーンに対し、アーロン自身は何をやりたいのか、何を考えているのかがわからないことだろう。

 アーロンがスナイパーとしても戦闘能力を維持するには、フィジカル用のグリーン、メンタル用のブルーと呼ばれる薬物を定期的に摂取しなければならない。
 さもないとCIAの追っ手に殺されてしまうからと、マルタを連れてアメリカを脱出し、フィリピンのマニラにある薬品製造工場に潜入する。

 しかし、そうやって主人公が薬を得た先に、命をかけてでも守りたい家族なり恋人なりの存在がいなければ、見る側としてはイマイチ感情移入しにくい。
 アーロンとマルタは恋人同士でも何でもなく、逃亡の最中もこれといったラブシーンがないしね。

 最後にラークス03(ルイ・オザワ)と呼ばれるドレッドストーン作戦のナンバー3(ボーンはナンバー5)が登場、マニラ市街でアーロンと激しいバイクチェイスを繰り広げる。
 おおっ、最後の最後でやっと面白くなってきたぞ、クライマックスはこいつとアーロンの死闘だろう。

 …と期待して見ていたら、この東洋人はバイクの後ろに乗っていたマルタに蹴飛ばされ、あっさり転んで死んでしまった。
 近年、これほど「何じゃこりゃ?」と言いたくなった幕切れも珍しい。

 オススメ度C。

(2012年 アメリカ=ユニバーサル・ピクチャーズ/日本配給=東宝東和 135分)

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※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

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77『さらば友よ』(1968年/仏、伊)B
76『傷だらけの栄光』(1956年/米)A
75『ハンズ・オブ・ストーン』(2016年/米、巴)B
74『ダンケルク』(2017年/英、米、仏、蘭)B
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72『関ヶ原』(2017年/東宝)
71『後妻業の女』(2016年/東宝)B
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47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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