『北陸代理戦争』(WOWOW)

98分 1977年 東映

『恐喝こそわが人生』(1968年)、『沖縄やくざ戦争』(1976年)と同様、WOWOWの1月の企画〈松方弘樹追悼特集〉で放送された1本。
初見は『暴力金脈』(1975年)と同じ、赤羽のTSUTAYAでレンタルしたVHSである。

興行的な不振、モデルとなった実在のヤクザが公開2カ月後に殺害されたことなどから、東映実録路線最後の1本となった作品で、前項『孤狼の血』を観に行く前日に再見した。
改めて観直しても、『仁義なき戦い』シリーズ(1973~74年)に勝るとも劣らない傑作だと思う。

松方演じる主人公は親分・西村晃を半死半生の目に遭わせ、兄貴分・ハナ肇の手首を切り落とし、彼らに命を狙われると、関西の大手広域暴力団を頼って代理戦争を展開。
が、その関西勢・遠藤太津朗、千葉真一、成田三樹夫らに利用されて捨てられると感じ取ると、すかさず地元の西村、ハナの元へ取って返し、「カネより土地です!」と共同戦線を張ろうと持ちかける。

『仁義なき戦い』の菅原文太が2作目以降は小賢しい狂言回しに転じ、窮地に陥るたびにサカズキ外交で切り抜けるのに比べて、本作の松方は最初から最後まで真っ向から身体を張った勝負を挑む武闘派。
毛皮のジャンパーに身を包み、顎を引いて相手を上目遣いに睨みつけ、身体を小刻みに揺すりながらしゃべる演技は迫力たっぷりであると同時に、松方ならではの艶と男の可愛さを感じさせる。

松方と伊藤彰彦の共著『無冠の男 松方弘樹伝』(2015年/講談社)によれば、身体を揺すりながらしゃべるのはモデルとなった福井のヤクザ・川内弘の癖だったそうで、本人から取材して演技に取り入れたという。
このあたりが、まだヤクザと映画会社の付き合いが容認されていた時代の実録路線ならではの特徴であり、コンプライアンス全盛の現代で製作された『孤狼の血』とは決定的に違うところだろう。

本作に関しては、製作秘話と公開後の殺人事件を詳細に追ったノンフィクションの傑作『映画の奈落 北陸代理戦争事件』(伊藤彰彦著、2014年/国書刊行会)も出版されている。
今度は誰か、この本を映画化してくれないものか。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2018リスト
※A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)

51『博奕打ち外伝』(1972年/東映)B
50『玄海遊侠伝 破れかぶれ』(1970年/大映)B
49『暴力金脈』(1975年/東映)B
48『資金源強奪』(1975年/東映)B
47『ドライヴ』(2011年/米)C
46『バーニング・オーシャン』(2016年/米)A
45『追憶の森』(2015年/米)B
44『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年/ワーナー・ブラザース)B
43『パットン大戦車軍団』(1970年/米)B
42『レッズ』(1981年/米)B
41『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(2016年/米)B
40『エクス・マキナ』(2015年/米)B
39『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年/西)B
38『ムーンライト』(2016年/米)B
37『アメリカン・バーニング』(2017年/米)B
36『セル』(2017年/米)C
35『トンネル 闇に鎖された男』(2017年/韓)B
34『弁護人』(2013年/韓国)A
33『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年/クロックワークス)A
32『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/東宝)B
31『南極料理人』(2009年/東京テアトル)B
30『沈黙 -サイレンス-』(2016年/米)B
29『メッセージ』(2016年/米)B
28『LOGAN/ローガン』(2017年/米)C
27『チャック~“ロッキー”になった男~』(2017年/アメリカ)B
26『ヒッチコック/トリュフォー』(2015年/米、仏)B
25『沖縄やくざ戦争』(1976年/東映)B
24『恐喝こそわが人生』(1968年/松竹)B
23『われに撃つ用意あり』(1990年/松竹)C
22『T2 トレインスポッティング』(2017年/英)A
21『ロスト・エモーション』(2016年/米)C
20『激流』(1994年/米)C
19『チザム』(1970年/米)B
18『駅馬車』(1939年/米)A
17『明日に処刑を…』(1972年/米)A
16『グラン・ブルー[オリジナル・バージョン]』(1988年/仏、伊)B
15『エルストリー1976- 新たなる希望が生まれた街 -』(2015年/英)D
14『I AM YOUR FATHER/アイ・アム・ユア・ファーザー』(2015年/西)B
13『サム・ペキンパー 情熱と美学』(2005年/独)B
12『ビリー・ザ・キッド 21才の生涯』(1973年/米)B
11『わらの犬』(1971年/米)A
10『O嬢の物語』(1975年/仏、加、独)C
9『ネオン・デーモン』(2016年/仏、丁、米)D
8『団地』(2016年/キノフィルムズ)B
7『スティーブ・ジョブズ』(2015年/米)B
6『スノーデン』(2016年/米)A
5『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B
4『ドクター・ストレンジ』(2016年/米)B
3『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(1967年/台、香)B
2『新宿インシデント』(2009年/香、日)B
1『日の名残り』(1993年/英、米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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