【NumberWeb】君は元カープ羽月の〝神走塁〟を見たか①「自分と同じ体の小さな子供に希望を与えたい」

僕が広島カープの羽月隆太郎という選手に興味を持ったのは、彼が代走のスペシャリストとして頭角を現した3年前のことである。
とくに2023年のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第1戦、1点ビハインドの8回に代走で出場し、DeNAのエース東克樹の癖を盗んで三盗を決めた場面には鳥肌が立った。

羽月はそれ以後も、ここぞという勝負どころで、相手バッテリーに警戒されながら、まさかのタイミングで果敢に次の塁を盗り、ベンチとスタンドを沸かせた。
あの頃、羽月は確かに輝いていた。

羽月の何がどのように優れているのか、いつかどこかに原稿を書こうと思い、僕はコツコツと取材を重ねた。
その矢先、羽月は指定薬物「エトミデート」、いわゆる「ゾンビたばこ」を所持、使用していた容疑で逮捕されてしまう。

羽月は法廷で有罪判決を下され、カープは契約を解除。
そうした最中、法廷やSNSで自分の他にもエトミデートを使用していたカープの選手がいると爆弾発言を行い、波紋を広げた。

一連の経過の中で、羽月が見せた〝神走塁〟は今や、すっかり忘れ去られてしまったかのようだ。
かつての羽月を知らない人たちやメディアには、「ゾンビたばこ」に手を出した愚かな若者としてしか捉えられていない。

いや、羽月は決して、それだけの存在ではなかった。
ドラフト最終順位の7位でカープに指名された当時、167㎝、70㎏の小さな体でこう宣言していたのである。

「早く一軍で活躍し、体の小さな自分でもここまでやれるんだと、同じ小さな子供たちに夢を与えられる存在になりたい」

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。2010〜2026年、東京スポーツでコラムや野球記事を連載。 日本文藝家協会会員。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。
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