『アシスタント』(WOWOW)😉

The Assistant
87分 2020年 アメリカ=ブリーカー・ストリート
日本公開:2023年6月 配給:サンリスフィルム

2017年、アメリカ映画界で”#Me Too”運動に発展したハーヴェイ・ワインスタインによるセクハラ事件を描いたドキュメンタリータッチの劇映画。
劇場公開中の昨年6月28日、NHK〈キャッチ!世界のトップニュース〉で紹介され、興味を抱いたのだが、当時は観る機会がなかった。

同じ事件を素材にした『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』(2022年)はワインスタインのセクハラを暴いたニューヨーク・タイムズの記者を主役に据えていたが、こちらはワインスタインと思しき映画会社の会長のジュニア・アシスタントが主人公。
名門大学を卒業し、憧れだった映画会社に就職して2カ月のジェーン(ジュリア・ガーナー)の一日を通して、セクハラが蔓延していた映画産業の内実に迫っていく。

毎朝暗いうちに出社するジェーンの仕事は電話番、コピー取り、さらに同じ会長室に勤務する先輩男性社員ふたり(ノア・ロビンズ、ジョン・オルシーニ)のランチのテイクアウトといった雑用ばかり。
そんな描写が淡々と、しかしどこか重苦しい空気感で描かれていくうち、突然会長夫人から電話があり、ジェーンは「主人にカードを止められたわ! 彼はどこにいるの?」とわめき立てる彼女の相手をさせられる。

会長夫人に一方的に電話を切られると、今度は会長本人からジェーンに電話がかかってきて、「妻に余計なことを吹き込むな!」と怒鳴りつけられる。
受話器を置いてガックリしているジェーンに、先輩社員たちが会長への謝罪メールの書き方をアドバイスする場面が何とも薄気味悪い。

そして、アイダホからやってきたという女性シエナ(クリスティン・フロセス)が新たなアシスタントとして雇われる。
ジェーンよりも若くて肉感的なシエナは、ソルトレークシティ映画祭で給仕係を務めた経験しかなく、映画については素人同然。

しかもニューヨークにやってきたばかりで右も左もわからないため、しばらく高級ホテルに住むことになっており、シエナをそのホテルまで送っていくように、とジェーンは会長に命じられる。
会長が自分の立場を利用して愛人を囲っているのだと察したジェーンは、人事部長(マシュー・マクファディン)に告発しようとするのだが。

ドラマチックでもなければサスペンスを盛り上げるような演出もなく、静謐な90分弱の上映時間中、音楽が流れるのはエンドクレジットだけ。
監督、脚本のキティ・グリーンはドキュメンタリーが本職で、これが初の長編劇映画だそうだが、終始緊張感に満ちた画面の中、セクハラ、パワハラが常態化している映画会社の内幕を緻密に表現している。

なるほど、NHKのニュース番組で紹介されるだけの作品ではあると納得しました。
ただし、”#Me Too”運動に関する知識のない観客も興味を持って観られるかどうかはわかりませんが。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗😱 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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