超大物バウアーの〝横浜デビュー戦〟は7回1失点9奪三振で初勝利⚾️

試合前までこの本を熟読

きょうはスポーツ紙が「世界中が注目している」とまで書いたDeNAの新外国人投手トレバー・バウアーの一軍初登板にして本拠地・横浜デビュー戦。
加えて、2020年のサイ・ヤング賞獲得後、DV疑惑によりメジャーリーグに出場停止処分を受けて以来、実に約2年ぶりの公式戦登板でもある。

しかも、その相手が広島カープとなれば、現在発売中の東スポGW特別号、及び東スポWEB(右下のバナーよりアクセスできます)にプレビュー記事を寄稿しているA先生としては、取材に行かないわけにはいかない。
実はいま、2019年にアメリカでベストセラーとなったバウアーが主人公のノンフィクション『アメリカン・ベースボール革命 データ・テクノロジーが野球の常識を変える』(ベン・リンドバーグ、トラビス・ソーチック共著、岩崎晋也訳、化学同人)を読んでいるもので。

この本には、バウアーが「MLBで最も科学的な投手のひとりであり、ピッチング・デザインの第一人者」と主張する根拠と背景が詳細に語られている。
とりわけ、〈セイバーメトリクス〉以来の革命と言われ、メジャーリーガーの間で大ブームを巻き起こし、DeNA・今永や広島・九里など日本のプロ野球選手も信奉者が急増している〈ドライブライン・ベースボール〉についての解説が非常に興味深い。

ドライブラインとは、これまで常識とされていた選手が持って生まれた素質や練習量の多さに偏ることなく、動作解析やデータ分析によって、現役晩年の選手であっても強化、成長することを可能にしたとされる総合的なトレーニングのシステム。
バウアーの急成長とサイ・ヤング賞受賞も、この革命的な理論との出会いなしにはあり得なかった、とバウアー自身とドライブラインの発案者カイル・ボディは言う。

この本に紹介されているバウアー独自の調整法は、30年以上野球を見続けているA先生にとっても初めて知った方法がほとんど。
きょうの登板直前にも、その一部が垣間見られた。

ベンチ前で独自に開発した長さ1.8mのショルダーチューブを振ったり、登板直前は投球練習ではなく遠投を繰り返したり、こういうルーティンをひとつひとつ見せられるだけでいちいちワクワクさせられるところが、他の選手にはないバウアーの魅力である。
マウンドに上がってから、投球練習の第1球を助走付きで投げているのも本に書いてあった通り。

そんなバウアーの日本での初球は151㎞の直球で、野間をライトフライに打ち取った。
二回には2死からレッズ時代の元チームメート、デビッドソンにソロ本塁打を打たれて先制点を許したものの、なお一、三塁のピンチで後続をピシャリ。

三回、空振り三振併殺に仕留めた場面で広島・新井監督からリクエストがかかると、チームメートとともに電光掲示板の再生映像を見つめる姿に独特の雰囲気が漂った。
五回には高校1年生以来、打席に立ったことがないにもかかわらず、藤田に教わったという送りバントを成功させて勝ち越しに貢献。

しかし、3-1で迎えた六回無死満塁で打席が回ったときは、1球も振らずに見逃し三振。
下手なことはできないと思った本人の判断か、ベンチからの指示かは不明です(恐らく指示だろうけど)。

いろいろあったバウアーの初登板は、元レッズのチームメートだったデビッドソンに一発こそ打たれたものの、7回98球を投げて7安打1失点、9三振を奪う力投で初勝利。
ヒーローインタビューのお立ち台で「横浜しか勝たん!」と日本語で力強く叫び、大観衆からヤンヤの喝采を浴びた。

その後、球場内の食堂で行われたテレビ会見、囲み取材にはAP通信、スポーツ・イラストレイテッドなど海外メディアの記者も参加。
なるほど、確かに「世界中が注目」したバウアーの初登板初勝利でした。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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