『ナワリヌイ』(WOWOW)🤗

Navalny
98分 2022年 アメリカ=CNNフィルムズ、HBOマックス
日本配給:トランスフォーマー

今年6月に劇場公開されたドキュメンタリーの話題作が、半年も経たないうちにもうWOWOWで初放送された。
取材は長期に渡っており、相当の製作費もかかっているだろうから、こんなに早くテレビ放送して採算が取れるのかと思うが、僕のような出不精の映画ファンにはありがたい。

本作の主人公、プーチン大統領に反旗を掲げた”ロシア反体制派のカリスマ”アレクセイ・ナワリヌイの活躍ぶりはすでによく知られている。
とりわけ国際社会の注目を集めたのは、2020年8月、西シベリアからモスクワへ向かう旅客機内でナワリヌイが倒れて明らかになった毒殺未遂事件。

ナワリヌイは緊急着陸したオムスクで病院へ搬送されたが、ユリア夫人ら家族をはじめとした関係者は、病院内で謀殺されることを恐れ、ナワリヌイをドイツのベルリンへ移送したいと主張。
オムスクの担当医師は案の定、ロシア当局の意向を受けてか、「国外へ移せるような状態ではない」と拒否していたが、結局は夫人ら家族の要求を受け入れてナワリヌイを退院させざるを得なくなる。

こうして一命を取り止めたナワリヌイは、自分を毒殺しようとした人間たちを洗い出す調査を開始し、背後にプーチン大統領の意思が垣間見える事件の核心へと迫っていく。
アメリカのニュース専門チャンネルCNNの全面協力の元に撮影されたこのくだりは、ハリウッドのエンターテインメント大作も顔負けの面白さ。

2021年1月、ナワリヌイは当局に拘束されることを承知の上でロシアへの帰国に踏み切り、予想通りシェレメーチエボ空港で逮捕され、詐欺罪、横領罪などの有罪判決を受けて刑務所に収監された。
本作のエンディングによれば、「刑期は20年以上に及ぶ可能性がある」というが、この映画がヒットすればするほど刑期が延びるのではないかと心配になってくる。

インタビュー映像からは、ユーモアのセンスに溢れ、ごく普通の夫、父親でもあることを感じさせるナワリヌイ。
いま、重罪犯ばかりが収監されているメレホボ刑務所でどのような日々を過ごしているのだろうか。

オススメ度A。

A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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