『ハッピーアワー』(WOWOW)😉

317分 2015年 神戸ワークショップシネマプロジェクト

今年、『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー作品賞にノミネート、外国映画賞を受賞した監督・濱口竜介が7年前に国際的な評価を受けた実験的作品。
劇場公開時にはロカルノ、ナント、シンガポールなど6カ国・地域の国際映画祭のほか、日本の文科省や現代日本映画祭など8つの賞を受賞している。

よく一緒に食事や旅行をしている4人の30代の女友だちが、何でも打ち明け合える親友同士のはずだったのに、付き合いを重ねるうち、それぞれが胸の内にしまっておいた本音、秘めたる私生活が明らかになり、固い絆で結ばれていたはずの関係性が揺らいでいく。
主役の4人を演じている田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りらの演技が妙に生硬で素人っぽいなと思ったら、彼女たちをはじめ、全キャストの3分の2に当たる17人が演技未経験者だという。

最初のうちはあまりに俳優らしくない出演者たちの演技がまどろっこしく、ストーリーも緩やかに進行するのでいささかじれったさを感じるが、主役の4人が神戸市で行われた奇妙なワークショップに参加するくだりから俄然面白くなってくる。
主催者のアーティスト・鵜飼(柴田修兵)は肉体の重心がテーマだと説明し、参加者同士を背中合わせに座らせた姿勢から立ち上がらせたり、額をくっつけ合って互いの思考を読み取らせようとしたり、相手の丹田に耳を付けて腹の中の音を聞かせたりする。

ワークショップの打ち上げの席で、会話の行きがかり上、主役4人のうちのひとり、看護師のあかり(田中)が自分の仕事がいかに大変かを訴えたり、もうひとりの主婦の純(川村)が夫の公平(謝花喜天)と離婚調停中であることを明かしたりして、仲のよかった4人の間に徐々に緊張感が漂い始める。
このあたりで、同じストーリーをプロの役者が演じたらこういう雰囲気は醸成できないだろうと、観ているこちらにも濱口監督の狙いが察しられる。

4人のうち、純と桜子(菊池葉月)は中学時代からの友だちで、桜子の夫・良彦(申芳夫)が自宅に母(福永祥子)を呼び寄せている最中であることから、良彦は純にあまり桜子を遊びに誘わないでほしいと告げる。
それでも、かねてから4人で約束していた有馬温泉への旅行に出かけると、ここで芙美(三原)の夫・拓也(三浦博之)が若い女性の作家・野瀬こずえ(椎橋怜奈)と連れ立って歩いているところに出くわす。

そうした小さな出来事の積み重ねにより、4人の感情がさざなみのように揺れ始めていた最中、有馬からの帰りに純が失踪。
さらに、夫、姑、中学生の一人息子が待つ自宅マンションに帰った桜子の身にも、想像もしていなかった災難が降りかかる。

果たして、この4人の物語はどのような結末を迎えるのか、濱口監督は先を急がず、あえてゆっくり、じっくり描いている。
その狙いは理解できるし、十分な効果も上がっているとは思うものの、個人的には観ているうち、ここは短くカットできるはずと感じた場面も少なくなく、やはり5時間17分は長過ぎるように感じた。

オススメ度B。

A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る