『すばらしき世界』(WOWOW)🤗

126分 2021年 配給:ワーナー・ブラザース

監督デビュー作の『蛇イチゴ』(2003年)をはじめ、『ゆれる』(2006年)、『ディア・ドクター』(2009年)、『夢売るふたり』(2012年)、『永い言い訳』(2016年)など、監督作品はほとんど観ている西川美和の2021年劇場公開最新作。
これまでの脚本はすべて自分のオリジナルストーリーだった西川監督が、佐木隆三の『身分帳』をベースとして映画化した初の原作ものである。

主人公は殺陣を犯した元暴力団員で、13年の刑期を終えて旭川刑務所から出所したばかりの三上正夫(役所広司)。
東京へ出てきた彼は身元引受人の弁護士・庄司勉(橋爪功)とその妻・敦子(梶芽衣子)に温かく迎えられ、安アパートで独り暮らしをしながら再就職活動に励む。

職を得るまでは生活保護を受けて食い繋ぐしかないが、ケースワーカーの井口久俊(北村有起哉)は「元反社の人は生活保護を受けられない」と三上に返答。
付き添った庄司が抗議すると、井口は三上の過去を伏せた上で生活保護を申請する。

三上がスーパーで買い物をして帰ろうとしたら、店主の松本良介(六角精児)に万引きをしたのではないかと詰め寄られる。
頭に来た三上が裸になろうとした途端、自分の勘違いに気づいた松本は平謝りして、三神が同じ福岡出身であることを知ると、やがて良き相談相手になっていく。

テレビディレクターの吉澤遥(長澤まさみ)は、そんな三上の経歴、罪状、刑務所での服役態度などが事細かに記された数冊の身分帳を入手。
これを津乃田龍太郎(仲野太賀)に送りつけ、三上を長期取材し、彼の半生と社会復帰のストーリーをドキュメンタリー番組にしないかと持ちかける。

テレビに出れば、三上が幼いころに生き別れた母親と再開できるかもしれない、という津乃田の口説き文句に三上は快諾。
しかし、しばしば短気を起こし、ついに若いチンピラを相手に大立ち回りを演じた三上の姿を見て恐怖を覚えた津乃田は、取材を続ける意欲を失ってしまう。

元犯罪者への差別、彼らを救済するはずの制度の不備など、社会に潜む矛盾や問題点を鋭く抉り出しつつ、温かみとユーモアに溢れた人物描写で観る者を引っ張っていく西川監督の演出力は今回も健在。
俳優では主演の役所が出色の出来栄えで、脇を固める北村有起哉、六角精児がいい味を出しているほか、弁護士夫人役の梶芽衣子、三上の元妻・久美子を演じる安田成美が印象に残る。

しかし、ひとつだけ、エンディングには不満というか、嚥下し難い違和感を覚えた。
布石が打たれていたのは理解できるが、この結末だけは違う形にできなかったのかと、個人的には歯痒さを感じました。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2022リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

30『私は確信する』(2018年/仏、白)C
29『透明人間』(2020年/米)A
28『アナザーラウンド』(2020年/丁、蘭、瑞)A
27『スーパーマン&ロイス』シーズン1(2)「引き継いだもの」(2021年/米)A
26『スーパーマン&ロイス』シーズン1(1)「パワーの目覚め」(2021年/米)A
25『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年/東映)A
24『昭和残俠伝 血染の唐獅子』(1967年/東映)B
23『大コメ騒動』(2021年/ラビットハウス)C
22『王の願い ハングルの始まり』(2019年/韓)A
21『フラッシュ・ゴードン』(1980年/米)B
20『タイムマシン』(2002年/米)C
19『アンダーウォーター』(2020年/米)C
18『グリーンランド−地球最後の2日間−』(2020年/米)B
17『潔白』(2020年/韓)B
16『ズーム/見えない参加者』(2020年/英)C
15『アオラレ』(2020年/米)B
14『21ブリッジ』(2019年/米)B
13『ムニュランガボ』(2007年/盧、米)C
12『ミナリ』(2020年/米)A
11『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(2021年/東宝映像事業部)C
10『死霊の罠』(1988年/ジョイパックフィルム)C
9『劇場版 奥様は、取扱注意』(2021年/東宝)C
8『VHSテープを巻き戻せ!』(2013年/米)A
7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014年/以)B
6『ある人質 生還までの398日』(2019年/丁、瑞、諾)A
5『1917 命をかけた伝令』(2020年/英、米)A
4『最後の決闘裁判』(2021年/英、米)B
3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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