目撃!にっぽん『遺された声〜横井庄一の“戦争”〜』(NHK総合)🤔

30分 初放送:2021年11月14日AM6:10〜 制作・著作:NHK/名古屋

太平洋戦争の残留日本兵・横井庄一が終戦後27年間のグアム島潜伏生活を経て1972年帰国してから、今年で50年目になる。
当時、僕はまだ小学校3年生で、横井が帰国に至った詳しい経緯は理解できなかったが、彼がジャングルでヘビやカエルを食べながら生き延びたという冒険漫画のようなストーリー、テレビで何度も繰り返し流された「恥ずかしながら帰って参りました」という〝名セリフ〟は脳裏に強烈に刻み込まれた。

今年8月21日には、横井の出身地・愛知県の地元テレビ局CBCが、横井のサバイバル生活、帰国に至る過程を詳しく振り返った『恥ずかしながら〜残留日本兵 横井庄一と妻〜』という約50分のドキュメンタリー番組を放送(今年8月21日、完全版オンエア)。
93歳の美保子夫人、グアム島での横井発見当時、帰国に尽力した日本人関係者などにインタビューし、改めて横井の人物像や戦争観をクローズアップしている。

NHKが制作した本作は、横井帰国の翌年、ある出版社の取材に応じて横井が語った衝撃的な内容を紹介。
約1500分にわたるインタビューの中で、戦時中に日本兵がグアム島民を殺していたこと、だから島民が恐ろしくてジャングルから出ていけなかったこと、そしてともに密林に潜伏していた志知、中畠ら最後の戦友たちが正気を失い、死んでいったことなどを、横井は赤裸々に語っていた。

最大の焦点はやはり、CBC作品『恥ずかしながら』でも取り上げられていた、横井がグアム島の密林潜伏中、現地人を殺したと自ら告白したという報道の真偽だろう。
これはその後すぐ、精神錯乱による発言と訂正された(というより注釈をつけられた)が、実際はどうだったのか、NHKの本作では当時取材に当たった記者から大変貴重な証言を引き出している。

小野田寛郎もそうだが、戦後30年近くも密林で生き延びて帰国を果たし、結婚もして家庭を構えた元日本兵に対して、いまさら戦地での行動の是非を問うことは、同じ日本人の心情として極めて難しい。
しかし、「戦争だから」という大義名分によって、日本兵がグアム島やサイパン島で現実に犯した〝罪〟が帳消しにされるのかと言えば、それもまた違う。

『恥ずかしながら』の中で美保子夫人は、夜中に横井がうなされて目を覚まし、長く戦時中のトラウマに悩まされていたようだと語っている。
そして、NHKの本作の中で初めて明らかにされた「グアムの戦後のことは日本政府に訴えなあかん。戦後の後始末をつけるために」という横井の言葉が、戦後77年、帰国後50年にして改めて、重く、深く、耳の奥に響く。

オススメ度A。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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