そして4番がいなくなった、と思ったら⚾️

試合前、田代巡回打撃コーチの前でフリー打撃をしている牧

三浦監督1年目の今季、DeNAの開幕スタメン4番は昨季と同じ佐野だった。
ラミレス前監督に4番兼主将に抜擢された昨年、打率3割2分8厘で初の首位打者に輝き、背番号も44から7に昇格して、4番の座は盤石かと思われた。

背番号7への変更は、1997年に首位打者となった鈴木尚典が51から7になった翌98年、2年連続首位打者のタイトルを獲得したことにちなんでいる。
98年と言えば、オールドファンならいまもまだよく覚えている通り、ベイスターズが1960年以来38年ぶりの優勝と日本一を達成し、社会現象になった球史に残るシーズン。

この背番号変更を決めた球団としては、新たなベイスターズの黄金時代を再現し、佐野にその象徴的存在になってもらいたい、と考えていたのではないか。
…という推測はいささか大袈裟かな。

しかし、今季の佐野は打率こそ3割台をキープしているものの、チャンスで凡退することが多く、勝負弱さが目立つ。
5月16日の広島戦では、四回1死満塁、六回1死一・二塁のチャンスで2打席連続併殺打に打ち取られ、次戦(同月18日)の中日戦から3番に回され、4番をオースティンに譲った。

この時点まで、「4番・佐野」はラミレス前監督の考案したオーダーの中で、三浦監督が唯一動かしていなかった打線の要だった。
実際、三浦監督自身、「4番は簡単に動かすわけにはいきません」と語っていたが、開幕44試合目にして自ら禁を破ったわけである。

さらに三浦監督はシーズン終盤、9月29日のヤクルト戦から佐野を3番から2番に変更。
このときは相手先発、ヤクルト・小川との相性を考えた上で、「2番に上げました」と表現しているところが、気配りを欠かさない三浦監督らしい。

そうしたら、きのうの阪神戦で、ここまで4番を務めていたオースティンが左足ふくらはぎ肉離れのために登録抹消。
途中退場したきのうの試合まで5試合連続ノーヒットだったから、かなり前から違和感や痛みを感じていたのかもしれない。

ふくらはぎは下手をしたら引退する羽目にもなりかねず、治療には慎重を期する必要があるから、きょうを含めて残り15試合しかないことを考えると、今季中の復帰は絶望的だろう。
そこで三浦監督、きょうの試合から元4番の佐野を2番に固定したまま、きのうまで3番を打っていた新人・牧を4番に抜擢。

いや、今季数々の新人記録を打ち立てている実績からすれば、牧の4番はある程度当然の起用でもあったか。
チームは試合に負けたものの、急造4番の牧は阪神・西勇から2安打して気を吐いた。

三浦監督は試合後のテレビインタビューで牧4番について聞かれると、「いろいろ考えた上で決断しました」とコメント。
「牧らしいバッティングを見せてくれました」と、大役にもひるまなかった新人を称えた上で、明日以降の4番起用については「まだ決めていません」と明言を避けました。

明日は佐野か宮﨑が4番を打つのか、それともオースティンに代わって昇格させた細川の大抜擢もあるのか。
ここまできたら、今シーズン最後までベイスターズの戦いぶりを見極めたいと思っています。



スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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