『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(WOWOW)🤨

Jeremiah Terminator LeRoy
108分 PG12 2018年 アメリカ=ユニバーサル・ピクチャーズ 日本公開:2020年 ポニーキャニオン

映画はなるべく事前情報や予備知識を排し、できる限り白紙に近い状態で観るのがベスト、だと思っている。
が、こういうレアな実話ダネの場合はその限りではない、ということを痛感させられた作品。

2000年、タイトルロールの作家J・T・リロイ(当時の通称JT)が『サラ、神に背いた少年』という処女作を上梓した。
母親によってトラック運転手の男娼となることを強制された少年の物語で、実体験に基づく自伝的作品という触れ込みから、たちまち全米でベストセラーとなった。

ところが、実は著者は男性ではなく、ローラ・アルバートという当時35歳の女性で、内容もまったくのフィクションだった。
しかし、この小説が大評判になったことから、著者JTにインタビューしたいという取材依頼、映画化権を買いたいというオファーが殺到。

対応に窮したローラは、当時同棲していたパートナー、ミュージシャンのジェフリー・クヌープの妹サヴァンナを男装させて著者JTに仕立て上げる。
ローラ自身はスピーディーと名乗ってJTのマネージャーに扮し、ボロが出ないよう、サヴァンナへの取材や干渉にいちいち口出しをしてはその場しのぎを繰り返す、という世間を欺く行為を6年間続けていた。

という内幕の実話は大変面白い。
原作は実際にJTを演じたサヴァンナ・クヌープ自身による回顧録で、監督ジャスティン・ケリーと共同で本作の脚本も書いており、リアリティもたっぷり。

とりわけ、バイセクシャルのサヴァンナ/JTを演じるクリステン・スチュワートは、彼女自身が実生活でもバイセクシャルであることをカミングアウトしていることもあって、どハマりの好演。
また、サヴァンナを使ってマスコミを翻弄するローラ役のローラ・ダーン、小説の映画化権獲得に血眼になる監督エヴァに扮したダイアン・クルーガーの演技合戦もなかなかの迫力である。

とくに、『サラ』の映画製作が進んでいる最中、かねてからサヴァンナにぞっこんだったエヴァがついにサヴァンナと関係を持つくだりがエロティックにしてスリリング。
しかし、ここから先、『サラ』にホームレス、麻薬中毒、HIVウイルス感染者であると書かれていたJTの経歴がすべてウソだった、という真相が暴露されるあたりから、突然展開が急ぎ足になるのはいただけない。

また、JTの正体が明らかにされる過程で、『サラ』を出版した版元の対応がまったく描かれていないのも不自然。
というわけで、役者の好演、興味深いネタ、ファッショナブルな雰囲気と、楽しめる要素は多いものの、ノンフィクション物としては今一つ食い足りない出来栄えにとどまっている、と言わざるを得ません。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

77『キング・オブ・ポルノ』(2000年/米)B※
76『怒りの葡萄』(1940年/米)A
75『パブリック 図書館の奇跡』(2018年/米)A
74『バクラウ 地図から消された村』(2019年/伯、仏)B
73『そして父になる』(2013年/ギャガ)A※
72『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
71『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
70『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
69『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
68『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
67『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
66『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
65『メメント』(2000年/米)B
64『プレステージ』(2006年/米)B
63『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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