『アス』(WOWOW)🤨

Us 116分 2019年 アメリカ=ユニバーサル・ピクチャーズ R15+

黒人差別をテーマにした監督デビュー作『ゲット・アウト』(2017年)が大ヒットし、アカデミー脚本賞を受賞したジョーダン・ピールの社会派ホラー第2弾。
『ゲット・アウト』と同様、本作もオリジナル脚本と製作を兼務しているワンマン映画で、前作の大成功によるものか、製作規模が格段に大きくなっている。

オープニングで、アメリカには閉鎖された地下鉄、通路、廃坑など、数千ものトンネルが残されているが、多くの国民はそういうものが存在することを知らない、というテロップが出る。
続いて、1986年夏に行われた飢餓と貧困撲滅のキャンペーンイベント、西海岸から東海岸までの6400キロを600万人が手をつなぐ〈ハンズ・アクロス・アメリカ〉キャンペーンのCMを流すテレビ画面が映る。

こうしてアメリカ史の闇を抉る作品であることを示唆したのち、1986年のサンタクルーズ遊園地にやってきた3人家族の描写から本筋に突入。
主人公の少女アデレード・ウィルソン(マディソン・カリー)が、遊園地で両親とはぐれ、〈ビジョン・クエスト〉(「自分自身を見つけてください」という電飾看板がついている)に迷い込み、自分とそっくりな女の子に遭遇する。

ここから場面は現在に飛んで、大人になったアデレード(ルピタ・ニョンゴ)が夫ガブリエル(ウィンストン・デューク)、長女ゾーラ(シャハディ・ライト・ジョセフ)、長男ジェイソン(エヴァン・アレックス)と夏休みを過ごしているサンタクルーズの別荘に移る。
そこへ突然、赤いツナギに身を包んだ自分たちとそっくりな4人家族が現れ、植木バサミを手にして襲いかかってきた。

アデレードの家族が自分たちのニセモノから逃れ、助けを求めて友人の別荘に駆け込むと、そこの家族もまたニセモノの家族に殺されていた。
やがて、ニセモノの家族はサンタクルーズだけでなく、近辺の町にも次々に出没し、ホンモノの家族を襲っていることがわかってくる。

いったい、このニセモノ家族の正体は何なのか、彼らはどこからやってきたのか。
という種明かしは書けないけれど、冒頭で暗示されている通り、本作の設定には明らかに現実のアメリカにおける格差社会や二重構造に対する皮肉と批判が込められている。

批評家が絶賛していることにはうなずけるし、ホンモノとニセモノの1人2役を演じている主役のニョンゴも熱演かつ好演。
オープニングのテロップとテレビCMを生かしたラストシーンにも、監督ピールのセンスと才能を改めて感じた。

しかし、人種差別批判をしたいのか、エンターテインメントとして観客を楽しませたいのか、作品の力点がはっきりせず、アメリカの社会情勢を実感として知らない日本人には、今一つピンとこないのではないだろうか。
ホンモノの家族とニセモノの家族の殺し合いにしても、ニセモノのアクションがギクシャクしていたり、やたら血飛沫が飛び交ったりするあたり、散々見飽きたゾンビ映画にそっくりで、正直なところ、あまり怖くなかった。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

80『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(2018年/米)C
79『キング・オブ・ポルノ』(2000年/米)B※
78『怒りの葡萄』(1940年/米)A
77『パブリック 図書館の奇跡』(2018年/米)A
76『バクラウ 地図から消された村』(2019年/伯、仏)B
75『そして父になる』(2013年/ギャガ)A※
74『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
73『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
72『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
71『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
70『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
69『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
68『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
67『日の名残り』(1993年/英、米)A※
66『メメント』(2000年/米)B
65『プレステージ』(2006年/米)B
64『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
63『キングコング:髑髏島の巨神』(2017年/米)B※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
Scroll to top