『名も無き世界のエンドロール』😉

101分 2021年 エイベックス・ピクチャーズ

キダ(岩田剛典)、マコト(新田真剣佑)、ヨッチ(山田杏奈)は小学生のころからの幼馴染み同士。
詳しくは説明されないが、3人とも親のいない複雑な家庭に育っていることから共感を覚え、互いにイタズラをしては驚かせる〝ドッキリ〟を仕掛けあって遊んでいた。

高校卒業後、キダとマコトが勤めていた大都市郊外の自動車板金工場に、リサ(中村アン)という女が真っ赤なポルシェで乗りつけ、持ち主の父親に内緒で修理してほしいと注文。
大物政治家の令嬢、トップモデルでもある高飛車なリサに一目惚れしたキダは、「俺はあの女と結婚するのにふさわしい男になる」と宣言する。

その後、板金工場は道路拡張工事のために閉鎖され、マコトは宮澤社長(大友康平)の伝手で紹介された川畑洋行の社長(柄本明)の下で闇社会の交渉人に転身する。
一方、キダは非合法カジノのディーラーをして貯めた4500万円で輸入ワイン会社を買い取り、その社長に納まって、リサへの〝プロポーズ大作戦〟を開始。

キダに協力を求められたマコトは、リサの婚約者を脅して別れさせ、言葉巧みにリサに近づいたキダは、見事彼女の心を射止めることに成功する。
そして、クリスマスイヴの夜、高級ホテルの一室でダイヤモンドの婚約指輪をリサに見せたキダは、10年かけて彼女との婚約にこぎつけた真の目的を初めて打ち明ける。

キダ、マコト、ヨッチの友情にくるまれた三角関係は、ロベール・アンリコの『冒険者たち』(1967年)のアラン・ドロン、リノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカスになんとなく似ている。
一方、キダ、マコト、リサの愛憎入り混じった関係性と距離感は、似てはいないものの、セルジオ・レオーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)のロバート・デニーロ、ジェームズ・ウッズ、チューズデイ・ウェルドを彷彿とさせた。

原作は2012年、小説すばる新人賞を受賞した行成薫の同題小説だが、そうした過去の名作映画にインスパイアされているのかどうかはわからない。
監督は傑作ミステリー『キサラギ』(2007年)を撮った佐藤祐市で、布石の打ち方や雰囲気の醸成が上手く、切なさを滲ませた幕切れまで、過不足なく楽しめるサスペンスに仕上げている。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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