『白い巨塔』(WOWOW)🤗

149分 1966年 大映 モノクロ

WOWOW開局30周年記念番組、連続ドラマW『華麗なる一族』のスタートに合わせて、過去の山崎豊子原作の映画化作品が放送された中の1本。
プロデューサーは大映の社長として飛ぶ鳥落とす勢いだった永田雅一、監督は社会派として頭角を現した山本薩夫、主演は本作の大ヒットと高評価によって一挙にスターの仲間入りを果たした田宮二郎。

あらすじはよく知られているように、食道外科の分野で天才外科医と謳われた浪速大学医学部助教授・財前五郎(田宮)が、権謀術数を尽くして学部内の選挙に競り勝ち、念願の教授として君臨するまでがダイナミックに描かれる。
財前が患者の腹にメスを入れる画面に池野成の重厚な主題曲がかぶさるオープニングから引き込まれ、財前の当選を阻止しようとする東貞蔵教授(東野英治郎)、その東と対立して財前の後ろ盾に回る鵜飼雅行教授(小沢栄太郎)らを中心とした選挙戦の暗闘も実に面白く、2時間半はあっという間。

言うまでもなく、当時31歳という若さだったにもかかわらず、野心と貫禄を併せ持った財前のキャラクターを見事に演じ切った田宮の演技は邦画史に残る名演と言っていい。
現実の田宮自身が大変な野心家で、本作でブレークしたのち、「日本のハワード・ヒューズになる」と公言して様々な事業に手を出しては失敗し、莫大な借金を抱えて猟銃自殺を遂げた人物だけに、いま観ると余計に財前と田宮のキャラクターがダブって見えるのだ。

財前に追い落とされるライバル里見脩二助教授役の田村高廣、愛人のホステス花森ケイ子役の小川真由美らも、田宮の受けに回りながら、しっかりと存在感を発揮している。
山崎豊子の原作小説に描かれた昭和の高度経済成長時代の人間ドラマは、やはり同時代に生きていた役者が演じてこそ、迫力と説得力が出る、ということを痛感した。

そういう意味で、本作がWOWOWで放送されたのは、『華麗なる一族』の出演者や製作者たちにとっては痛し痒しだったのはないか。
本作の鑑賞後に『華麗なる一族』を観ると、万俵大介役の中井貴一も高須相子役の内田有紀も頑張ってはいるが、昭和の役者たちに比べると、どうしても押し出しが足りないように感じられてしまうのである。

以下は余談だが、田宮は自分の本名・柴田吾郎と音が同じ五郎という名の財前のキャラクターが気に入り、自分を重ね合わせるほど没入し、のちに原作の続編がテレビドラマ化された『白い巨塔』(1978〜79年)でも財前役を演じて高く評価された。
ちなみに、田宮二郎という芸名は、大映社長・永田がオーナーを兼務する大毎オリオンズに阪神から引き抜いたスター選手・田宮謙次郎にあやかった名前にしろと、永田が強引に押しつけたものだったという。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
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※再見、及び旧サイトからの再録

45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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