BS世界のドキュメンタリー『クンバカルナ 神の山への登頂』(NHK-BS1)😉

The Wall of Shadows
45分(オリジナル版94分) 2020年 ポーランド、ドイツ、スイス
Braidmade Films/CORSO Film/Vertical Vision Film Studio

クンバカルナ(ジャヌー)はヒマラヤ山脈の東端に聳えるネパールの山で、標高7710mの東壁はいまだに征服した者のない未踏峰である。
もともとは人間で、弟に殺されかけた長男が神によって山に姿を変えられた、という言い伝えがあり、地元のシェルパの間では足を踏み入れてはならない「神の山」とされていた。

本作は最初、ベテランのシェルパのひとり、テムジン一家が季節によって標高の異なる家に移り住んでいる生活を映し出す。
一人息子は将来医者になりたいという夢を持っているが、テムジンの登山ガイド料、妻が絨毯を編む内職だけではとても学費を賄えない。

そこへ、クンバカルナの初登攀を目指す登山家、ロシアのセルゲイ・ニーロフ、ドミトリー・ゴロフチェンコ、ポーランドのマルチン・トマシェフスキら3人がやってくる。
いずれも世界的に知られた実績を持つアルピニストで、テムジンが彼らのガイドを務めることになった。

神の山へ入ることは許されない、なぜそんな仕事を引き受けたのかと憤る妻に、稼ぐためには仕方がないじゃないか、とテムジンは言い返す。
こうして始まったクンバカルナ登頂は困難を極め、登山家たちも撤退か続行か、ロシア側とポーランド側で意見が分かれる。

雄大なヒマラヤ山脈の映像には圧倒され、テムジン一家と登山家たち双方の人間ドラマを交互に映し出した構成もうまい。
ただし、登山家が絶壁を上る姿、下る後ろ姿をいずれもカメラが先回りして彼らの上から捉えた場面など、ドキュメンタリーの正統的手法としては疑問を感じる部分もある。

また、世界的に著名な登山家たちの経歴はおろか、フルネームすらきちんと示されていないのは不親切、という以上に看過し難い構成上の欠点。
本作より長く、きちんとディテールを描き込んだオリジナル版、及びディレクターズカット版があるのなら観てみたいが。

オススメ度B。

※その後、原題で本作を検索したところ、オリジナル版は94分で、NHK版は半分以上もカットされていることがわかった。
しかし、NHKは番組内、及び公式ホームページでもカットしていることについて何の説明もしていない。
(6月17日の追記)

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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